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12 娯楽だ、娯楽!

 割とスローライフなところが最近の異世界ものっぽかったり、キャラデとか適当ファンタジーなところが90年代っぽかったり。

 ここは90年代ファンタジー(異世界mix)みたいな感じだろうか。なんか、人気アニメの主題歌の別ver.みたいだ。無駄にmixされて元の方がいいのにっていう感じの曲が入っているサントラもあったな……。

 ああ、アニソン聴きたい。


 せっかく転生したんだから楽しめばいっか! という私のアホなノリ自体が90年代っぽいのかもしれないが。そこが青春時代だったのかだから仕方ないと思ってくれ。

 死ぬ前日に、どっちも好きとか熱烈に思っていたから神様が気を利かせてくれたのだろうか。

 神様、グッジョブ!

 ま、転生ものにも色々あるし深く考えずにいこう!

 とりあえず、キャラデが90年代な異世界にだけで結構幸せだし。


 なんて、たまには私も考えたりする。結局、深く考えないけど。だって、深く考えたってわからないのだから悩んでいる時間がもったいない。


 それに、今日はすごいお楽しみがあるのだ。そのせいで以前の世界のことを考えたりしていたというのもある。

 村には基本あまり娯楽のようなものは無い。スマホとかテレビとかゲームとか漫画とかアニメとか、当たり前だけどそういうものは一切無いのだ!

 そんな何も無いところに! 今日はなんと! 旅の一座が来ている!

 これは大事件ですよ、奥さん!

 てなわけで、私は朝からわくわくなのであった。


「お父さん! ねえ、すぐ行く? もう行く?」


 身も心も幼児化してお父さんにまとわりついてしまう始末だ。元々見た目は幼児だから問題は無い。


「まだ始まるには時間がありますよ。ああ、リュリューは劇を見るのは初めてでしたっけ」

「うん!」

「では、はしゃぐのも仕方ありませんね」

「そうだよー!」


 お父さんの手を持ってぶんぶんする。


「こらこら、危ないですよ」


 と言いつつ、振り払ったりしないのがお父さんの優しいところだ。


 もちろん劇を見たことがないのはこの世界に転生してからの話で、前の私の時はむしろ舞台を見に行くのは好きだった。

 舞台というか、ミュージカルというか、2.5次元というか。まあ、そんな感じの。

 そういうのとは違うとはわかってはいるけど。それでも楽しみなことには変わりない。

 転生してから初めての劇ですよ!


「はぁ~。楽しみ」


 娯楽! 娯楽!


 で、村の人達も私と同じく娯楽に飢えていたようで。

 村の真ん中にある広場は人で溢れていた。

 楽しいことには参加しなきゃ損だもんね!

 なんだかお祭りの時みたいに活気がある。この広場は収穫祭の時なんかにも使ったりするのだが、もはやお祭りの時以上の熱気だ。


 広場にはロープが張られている場所があって、劇はそこで行われる様子だ。ステージと言っていいだろう。

 お父さんと私は顔見知りの村人たちに挨拶したりしながら、ぐるりと広場を回った。それなりに大きな村なので、あまり見たことがない人もいる。みんな劇を心待ちにしているのか、浮き浮きしているように見える。まさにお祭り気分というやつだ。


 すでにステージに近い特等席らしき場所は人で埋まっている。


「私たちはこの辺でいいですかね」


 お父さんが観劇の場所に選んだのはステージから離れた場所。特等席とは言い難い。

 私も文句は言わない。


「大丈夫ですか? 見えますか?」


 と、言われても子どもの背ではちょっと難しい。なにしろ広場は人で溢れている。


「これならどうです?」


 ひょい、と身体を抱えられ肩車される。


「わあ! すごい! 見えるよ、お父さん!」

「それはよかったです」

「私だけの特等席だね」


 お父さんと顔を見合わせて笑う。


 直美だった頃なら母に『あなただけでも前の方に行って見てきなさい』なんて言われていたことだろう。

 実際、目の前でもそういう光景はある。この世界でも同じことを言っている親もいる。

 だけど私はここでいい。


 私は気付かれないようにお父さんの顔をそっと見る。

 私たちはこの村では後から入ってきたよそ者だ。お父さんもあまり目立ちたくはないようなので、私もそこは察している。

 村八分なんて言葉が前の世界にもあったくらいだし、田舎ってのは怖いものなのだ。

 あまりに小さい村だとよそ者が入りにくいから、そこそこの大きさの村を選んだのかなとも思う。

 ぼんやりしているようで意外としっかりしているとこもあるお父さんだから。


 とにかく私たちは純粋なこの村の人間ではないから、なるべく前に出すぎたりはしない方がいいってことだ。


「あ、始まるみたいだよ」

「いよいよですね」


 座長らしき男性が出てきて一礼する。

 わああ、と歓声を上げながら一斉にみんなが拍手する。

 私も小さな手で負けじと手を叩く。

 別に一番前の席じゃなくたって、私のわくわくは減ったりなんかしないのだ!


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