変態王子&モブ令嬢Side ダンスパーティの裏側で……の、裏側③ タクト奮闘記録
次回でこの「タクト奮闘記録」は完結。
ようやくゼフィーに会えるね、タクト!╭( ・ㅂ・)و
シャロン伯爵家へと到着すると、慌てて使用人たちが出てきた。どうやら伯爵とその夫人はまだ舞踏会から帰宅しておらず、レオナルド自身も今日は昼間から出掛けて居ないという。今この邸に居るのは、レオナルドの弟や妹らと使用人だけの様だ。
まぁ、ここにゼフィーをさらって来る事はさすがに無いだろうとは思ってはいたが……使用人の中に何か知っている者が居るかもしれない。おれはカーマインに事情を知っている者が居ないか調べさせる事にした。
「タクト様、こちらの者が何やら知っているそうです」
カーマインが従者らしき男性を連れて来た。青白い顔色をしているその従者は見覚えがあった。昔、王都の街でレオナルドと一緒に居た従者だ。おれの前まで来ると地面に頭を擦り付けて悲痛な声をあげた。
「も、申し訳っ、ありません! レオナルド様をお止めする事が出来ませんでした!」
「謝罪よりも何を知っているのか、今はそれが聞きたい。話してくれ」
「は、はいっ……」
その従者の話によると数週間ほど前にレオナルドの元にとある令嬢の使いが現れ、その後何度もレオナルドはその令嬢の元へ会いに行っていたらしい。最初は新しく好きなご令嬢が出来たのかと思っていたが、その内何やら物騒な男たちと密談を重ねる様になっていったという。
「それで、今日はその男たちと外出先で合流された後、私は先に帰されてしまったのですが……男たちとレオナルド様がピスケリー伯爵家へ向かう様な話をされていたのを聞いてしまい……何か起きるのではないかと心配していたのです」
やはりゼフィーの誘拐にはレオナルドが関与していた。
「レオナルドが会っていたという令嬢は誰か分かるのか?」
「名前は存じ上げませんが、確か男爵家のご令嬢です」
男爵家と聞いて嫌な予感がした。まさかとは思うが・・・。
「何か特徴とか無いのか?」
「髪の色が珍しいピンク色の・・・」
「アイツか!」
嫌な予感が的中した。パチェット男爵家のあのピンク頭だ! けどアイツはさっき地下牢に入れられていたな。これはアルと連絡を取るべきだろうか。
「タクト様! 王宮から騎士団が派遣されて来ました」
カーマインの言葉に振り返ると、門の向こうに王立騎士団の旗が見える。アルが派遣してくれたのか?
事情を聞きに騎士団の方へ近づくと、スクトの姿があった。
「アルから騎士団借りてきたよ、好きに使えってさ」
「そうか、それは助かる」
アルの方は陛下や重臣たちと緊急会議を開いて、あのピンク頭の引き起こした事件の処遇に追われているらしい。
「スクト、どうやらゼフィーの件はピンク頭とレオナルドの仕業らしい」
「え、これもあのピンクちゃんの事件なの? うわぁ……もう、頭悪いとしか言いようがないねぇ」
「恐らくゼフィーはレオナルドの奴と一緒に居る筈だ」
その時、おれの目の前にパルクが突然姿を現した。
「タクト様、所在を突きとめました」
「……どこだ」
「西にあるスモラの森の中にある山小屋です。アスチルゼフィラ嬢はご無事の様ですが、小屋の周りに複数の刺客たちがおります。他にはレオナルド・シャロン卿のお姿もありました」
王都の西側に位置する小さな町スモラ。そこから更に西に向かうと隣国との国境の町チャッケがある。
「スモラという事は、そのまま隣国サズレア王国へと向かうつもりだな」
「はい、その様です」
ゼフィーを連れて隣国へ亡命するつもりか。国境を越えられると厄介になる。その前に何としてもゼフィーを助け出さなければ!
「パルク達暗部は先に行ってレオナルド達を見張れ。おれ達も秘密裏に小屋へ向かう」
「御意」
一言答えるとパルクの姿は一瞬で目の前から消える。相変わらず暗部の奴らの動きはどういう仕組みになってるのか謎だらけだ。
「スモラの森へ行くのなら、目立たない様にこっち側から迂回するのが良いだろうね」
スクトが地図を取り出しておれにルートを示す。
「あぁ、その方がいいな。スクトも手伝ってくれるか?」
「勿論だよ」
おれは騎士団に指示を出し、スクトの提案通りに迂回しながらスモラの森へと向かった。