運命への叛逆
オーガ以降は特に苦戦することもなく糸で魔物を倒し、ずんずんと進む俺とペネロペの前に金色の扉が現れた。
ドワーフ金と呼ばれるこの金属を合成できるのは、未だに古代ドワーフ族だけであり、そしてその肝心の古代ドワーフ族は姿を消してしまったため、完全なるロストテクノロジーとなっている。
そんな希少なドワーフ金のみで造られた黄金の扉は、荘厳な印象を俺たちに与えていたのだった。
その扉はあまりにも大きく、力づくでは開きそうにないので、これはどうやったら開くのだろうかとペネロペに相談を持ちかけようと思案していると、突如声が響くのだった。
「問題です」
チャラン! と軽快な音とともにアナウンスは始まる。
「あなたは将来有望な貴族の長男です。そんなあなたに求婚をするものが二人。幼少期、共に大冒険をした幼馴染と、運命の出会いを果たした自分よりも身分の高い上流階級のご令嬢。さあ、どっち?」
なんだこの質問は。
というかこれは、何なんだ。
そういう雰囲気じゃなかったでしょう!?
「もちろん……運命の出会い……?」
何故かペネロペもちょっとノリノリである。
一体どうなっているのかと後ろを振り返ると、そこには来たはずの道は既に無く、幼馴染とデカデカと書かれたドワーフ金製の扉が鎮座していた。
正面の扉には運命の出会いと書いてある……。
どうすんだ、これ。
「まあ、そういうことなら……」
俺はとりあえず運命の出会いの扉に近づくと、自動的に空いてしまったのだった。
そしてその扉の先には……!
「問題です、チャラン! クール系? 可愛い系?」
またも扉があったのだった。
それから質問は続く。
犬派、猫派? ロリ、お姉さん? 貧乳、巨乳? ロング、ショート? 吊り目、タレ目? 髪は明るい暗い?
くだらない、実にくだらない質問が続いた。
ちなみに俺は猫派でロリで貧乳でロングでやや吊り目、髪の毛は丁度ペネロペくらいのが好みだが、そんなことはくだらない。
心なしかペネロペはガッツポーズをしたようにも思えたが、気のせいだろう。
「では、最終工程の人体錬成シーケンスを開始します。お疲れ様です、モニターにはここで退場していただきます」
がしゃん、がしゃんと騒音が響くと、壁に配置されていた巨大なドワーフ金の鎧のような形をした装置が俺たちに向かって動き出す。
あれには見覚えがある、『ドワーフ・ティガー』。
滅んでなお人類を脅かす古代ドワーフの恐るべき秘密兵器であり、4本の腕と12の工具で人体をバラバラに解体する二足歩行する機械仕掛けの巨人、厄介な相手だ。
それにあいつの予測演算能力は、もはや未来視としか説明できない領域に到達している。
こいつばかりは相性が悪い、せめて知能の低いモンスターなら意表を突けば後衛の俺ですら単独で倒せる場合がほとんどだが、こいつ相手ならそんな敵のミスに乗じた作戦が通ることは望めないだろう。
「やれるか……?」
俺は糸を飛ばす。
だが、ドワーフ金はそうやすやすと切れてはくれない。
やつを倒すにはドワーフ・ティガーの背中についている炉心から原動力となっている魔石を取り出す他ない。
だが、やつはターゲットの方向を常に向くようになっているため、俺一人で背後に回り込むことは不可能に等しい。
見えない炉心から糸で魔石を引っ張りあげることは困難だ。
俺が熟考していると、やつは巨体に見合わない超スピードで距離を詰めて剣を振るって来る。
「くっ!」
咄嗟に左手の物理糸を蜘蛛の巣の様に張り巡らせて防御するが、腕ごと持っていかれそうな威力だ……!
俺が姿勢を崩すと、さらに距離を詰めて次にノコギリの刃を振るう。
瞬間、思い出す。
ここに来る時に見た一枚の絵を。
運命士ペネロペの描いた、俺の胴体が真っ二つになる絵を。
俺ばかりは大丈夫であろうとろくでもない自信を持っていたことを悔いる。
咄嗟に物理糸をたぐり、鉄杭を弾き飛ばすも微動だにしない。
これが運命か。
運命は変えられない……!?
それを受け入れようとした次の瞬間だった。
「危ない……!」
矛盾、矛盾であった。
誰よりも運命に翻弄されてきたであろう少女が、運命に立ち向かう。
その少女は、たった1本のチープな剣で、握れば折れてしまいそうなか細い手足で踏ん張る。
今にも押し潰されてしまいそうな少女は、殺戮兵器の巨大な刃を弾き飛ばす。
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