原初魔法
これは次回作に繋がるお話です。
読み切りみたいなものだと思っていただければ幸いです。
思うに、冒険者失格というのは僕に相応しかったのだ。
例えSランクパーティのリーダーに、ダンジョンの奥深くに投げ捨てられて殺されかけたからといって、僕だけがみすみす帰還するのはギルドの規約違反。
僕は予め定められたルールを知りながら、それを破ったのだ、冒険者失格だ。
だが、それを気に病むことはない。
Sランクダンジョンで得た力を考慮すれば、むしろこのボレアスという元リーダーの男に感謝してもいいだろう。
「────」
この世の理によって音が発生しない│原初魔術言語により、世界最強の│魔導書、アカシック・レコードを起動する。
「なあアルベール、アルベール=エクス・カルス。知ってるか? この訓練所は今やってる対人訓練で5連勝しないと卒業にならねえ。俺様の人脈ならAランク冒険者を呼んでお前を一生ここに閉じ込めることだってできるんだぜ」
共に失格の烙印を譲り受けた僕の元パーティリーダー、ボレアスはにやりと笑う。
他の生徒たちもにやにやと、薄ら寒い笑を零している。
「なるほど、それは困りますね。でもボレアスさん。それは僕に勝てたらの、もしもの仮定のお話ですよね。それじゃ無理ですよ」
「なんだと……俺様はSランク冒険者だぞ! てめえみたいな考古学しか能のねえガリ勉野郎にゃ本来縁もゆかりもねえんだ! 俺様が一時でも拾ってやったことを感謝しやがれ! 『斧よ現れよ』!」
ボレアスの手には魔力斧が握られる。
重厚、重圧、冷酷無比、残忍、毅然。
僕が見た魔力武器の中でも、ボレアスの物は圧が凄まじい。
見ただけで背筋が凍りつく。
だが、武器の生成ならば今の僕ならもはや負けてはいない。
むしろ──
「────」
音のない詠唱。
直後、世界から音が消える。
色も奪われ、不毛の世界が広がっていく。
そして僕の手を中心に、虚無の爆発が発生する。
爆発から生まれた剣を、僕は握る。
「ぬわっ……」
直後、ボレアスは意識を失う。
いや、ボレアスだけではない、この訓練所併設闘技場の観客全てだ。
この場にいるあらゆる全ての生命が、一時の活動を停止する。
「またか……」
一度武器を召喚した時も、同じことが起きた。
つまり、この虚無の爆発は偶然ではなく、必然的に起こる現象なのだろう。
僕は次の機会にはこの手を封じて、監督官に結果を見せるために手加減をしなくてはなるまい。
魔術の祖は、│元素魔法、│召喚魔法、│幻術魔法、│回復魔法、│変性魔法、│奇怪魔法の6つを後世に伝えた。
だがそれは、人々に分かりやすく分類、体系化したに過ぎない。
最初に生まれた本来の魔術、│原初魔法。
これを使えるのは、世界で僕だけなのだから。
応援ありがとうございます。
第2章、輝ける聖騎士編を予定しておりますが、公開はもうちょっと後になるやも知れません。
だだ、読者の皆様をお待たせするのも何ですので、以前私が暇な時に趣味で書き留めておいた作品を近日中に短期連載したいと思います。
最後に、糸使い1章完結まで拝読頂き、誠にありがとうございました。
もしよろしければ、作者をフォローして今後の展開を追っていただけると嬉しい限りでございます。
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