Winner winner chicken dinner.
それからしばらくはアーク商社について調べながら、ペネロペ、マキナと共に街を観光しながら商売をし、師匠に金と食事を提供し、その他諸々の家事を手伝いをして面白おかしく住まわせてもらった。
平穏な日々だった。
だが、今日は大きな戦いの幕が切って落とされる。
「手札は持ったな。行くぞ!」
ペネロペ、マキナ、師匠と俺の4人は家を後にする。
俺たちは一週間前、ヤカシュへと挑戦をする決断をした。
事の発端は師匠のひとことだった。
『ヤカシュでは最近、巨大建造物の赤い塔の一階にカジノと呼ばれる世界最大級の賭博場ができた』
その一言は俺を駆り立てた。
なぜなら賭けには、明確な必勝法があるからだ。
俺は今日勝つ。
そのためにみんなと何度も特殊な訓練をしたのだ。
それにカジノのバックにはアーク商会がいることも明らかになっている。
ならばやることはただ一つ。
さあ、今夜の夕食はチキンディナーと洒落こもうじゃないか。
*
俺は入念な身体検査をされた後、ついに大きな扉が警備員によって開かれ、カジノへと入室する。
俺は夢物語の舞台へと上がる。
だが、思い知らせてやらなければならない。
カジノで稼げるだなんて、それこそディーラーの夢物語に過ぎないのだと。
辺りを見渡す。
すでに師匠とペネロペ、マキナは配置についている。
後は俺がテーブルに着くだけだ。
今一度、段取りを確認しよう。
まず、マキナがブラックジャックの席につき、最小額をちまちまとかけ続けてカードカウンティングをする。
機が熟したら、マキナがハンドサインで師匠にゴーサインを出し、それを俺に伝える。
ここで重要なのは、あくまでみな他人だと装って行動しなければならない。
「…………」
師匠はツインテールを解く。
これが合図だ。
俺はテーブルに着き、ブラックジャックを開始する。
「お兄さん、ここは始めてかしら。うふふ、今夜はいいご馳走にありつけそうなのよ」
マキナは俺に語りかける。
俺のスキル『超ひも構成』とマキナに備わる機構により、声も容姿もマキナとは全く異なり、まるで別人のようだ。
よし、変装は上手くいってるな。
そしてペネロペのセリフに含まれる単語『ごちそう』、これはカウントが+13の証。
「金をチップに変えてくれ。そして……200金貨分ベットだ」
ブラックジャックには明確な必勝法がある。
それは出現したカードを数え、次にくるカードを予測すること。
警備を気にして下手にカンニングのスキルは使えないが盤面は完全に俺の掌の上だ。
もちろん俺の盤面は21。
「|Winner winner chicken dinner.《俺の勝ちだ。夕飯は豪勢に行くとするか》」
さあ、アーク商会の資金は根こそぎ俺のものにしてやる。
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