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若さ

「さて、再三言うけど、これは鍛錬じゃなくて、自衛のための最低限の生き抜くコツなの。いい? 分かったらはいって言いなさい」


「は、はい……! リコ師匠!」


 私としたことが、こんなにも小さい子に甘っちょろいとは思わなかった。


 バカ弟子、ハルの連れてきた元奴隷の少女ペネロペは弱い。


 それこそ心の中に悪魔という怪異が巣食っているというのに、この貧弱さは非常に不味い。


 ペネロペはハルのために戦えるようになりたいと私に申し出たが、それはキッパリと断った。


 だが、それはそれとして彼女の弱さは悪い大人に利用されてしまう可能性が高いため、良きお姉さんとして彼女を保護してやる責任があるのだ。


 だからこれはその責任分だけ、ほんのちょーっとだけ最低限の魔術とか教えてあげるだけなのだ。


「師匠じゃないわ。弟子はもう採らないのよ。あえて呼びたいならリコお姉ちゃんって呼びなさい。まあいいわ。まず、こんな感じに指先に魔力を集めるのよ」


 だが、彼女は浮かない顔だ。


「り、リコお姉ちゃん。私は前に出て戦いたい。ハルは後衛しかできないから……。だから!」


 死に急ぐ顔だ。


 この子のような顔をする子はいつも、どの時代でもすぐ死ぬ。


「四の五の言わずに真似する!」


「ひゃいっ……!」


 ペネロペちゃんは目に涙を浮かべながら私の真似をする。


「そう、その指先で描いた魔法陣の出力先を自分の体に通すイメージで……」


 彼女は随分飲み込みが早い。


 これはすぐにでも肉体強化を習得できそうだ。


「……こ、こうかな……」


 彼女は物の見事に私の指先を真似、ルーンを描くことに成功した。


「そうよ。じゃあ私の掌を軽く殴ってみなさい」


 彼女は言われるがままに私の掌に軽く拳を突き出す。


 すると、周囲の風は荒ぶり、砂塵を撒き散らし、破城槌の如き破壊力が私の掌に響き渡る。


「し、師匠!?」


 ペネロペはあまりの威力に私の心配をしてくれたようだ。


「ご心配なく。ルーン魔術は私の得意分野なのだから」


 全く、自分が耐えきれないほどの技を教えるほどのドジっ子に見えていたのだろうか。


 ツインテか、ツインテが悪いのか。


「おや、おねえちゃんにリコお姉ちゃん。なにやら面白そうなことしてますね。しかしルーン魔術なんて、誰が使っても同じ……」


 そう呟いたのはハルのもう1人の連れ、神候補生のマキナちゃん。


「ふーん。じゃあ試してみる?」


「ええっ、私神候補生ですよ? 人間如きの能力では絶対に叶わないですって」


 ちょっとカチーンと来た。


「マキナちゃん。それはリコお姉ちゃんに失礼かも……」


 ペネロペはマキナに、私へ謝るように促す。


「いいのよペネロペちゃん。ほらマキナちゃん、こっちきてタイマン張りなさいよ」


「タイマンって……。では、何割ほど出しても?」


「100割で」


 私がそう言うと、彼女は掌からかなり珍しい黒魔術を練り上げ、それを木剣のように振り下ろす。


「いいんです? 私、今地上最強の生命なんですけど」


 その動作は目にも止まらない……ほどでもないか。


「捕まえた」


 私が黒魔術を素手で掴むと、彼女はしんそこ驚いたような表情を見せる。


 私はそのまま黒魔術の木剣ごと反対方向の地面と彼女を投げ飛ばす。


「のわぁぁあ! 黒魔術は何もかもを取り込む暗黒物質なのに素手で!? 人間技じゃないですよこの人!……こうなったら時間遡行で」


 彼女は神の技の一つだろうか、空間転移をしようとする。


「それはちょっと遅い判断ね」


 なのでルーン魔術でそれを描き消す。


「へ?」


 マキナちゃんはそのまま地面に頭をぶつける。


「あいったぁぁぁあ!」


「ふん、身の丈に合わない技を使おうとするものじゃないわ。自業自得よ」


 あまりにもいい音が響き、ちょっと気持ちが清々したので、ルーンでマキナに蓄積したダメージを回復させる。


「ま、マキナちゃん大丈夫?」


「いたっ! いててててぇ……。ふぅ、無事ですよ。リコお姉ちゃんが衝突の瞬間にルーンで痛みを和らげてくれましたので。それでも心配かけましたね、お姉ちゃん。それにごめんなさい、リコお姉ちゃん」


「ええ、全然気にしてないから平気よ。それより回復はちゃんとしてるかしら。ルーン魔術なんて誰が使っても同じだもの、ちゃんと効いてるか確認しないと、ねえ?」


 全然根に持ってるわけではないが、煽れるだけ煽っておこう。


 根に持ってるわけではないが。


「うわぁ……リコお姉ちゃん、もしかして結構根に持つタイプ?」


 ペネロペちゃん、そんなことはないよ。


 とにもかくにも、せめて自衛の方法くらいはこの若造たちに教えてあげよう。


 いや私も若いけれど。

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大事なお知らせ

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『面白いかも』

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