狼血の誓い
今回は勇者パーティ斥候役、サキのちょっとしたお話です。
それでは本編をどうぞ
私は知ってしまった。
私の妹を捕まえて奴隷として売り飛ばした組織のボスが、今まさにヤカシュの街にいることを。
「それでお前、もう一度しっかり、はっきりと言うにゃん。もっとも、命が可愛くないって言うのなら、言わなくても構わないけどにゃん」
「わ、分かった! 言うから! は、離してくれぇ!」
私は男の目に突き立てていた黒檀の刃を下げると、男を手放す。
妹は組織のボス直々に仕えているらしく、接触は難しい。
だが、情報が正しければボスを倒せて妹も助け出せる一石二鳥、唯一無二のチャンスかもしれないのだ。
「早くするのにゃん、私がフリフリのメイド服を来てにこにこしてやってるのも、今のうちだにゃん」
「けほっ、けほっ。勇者パーティの散斥士は人当たりのいい朗らかな性格じゃなかったのかよ、聞いてた情報と随分違うぜ。まあいい。……約一ヶ月後に奴隷商社、アークのリーダーがヤカシュの商館で取引をするらしい。どんな取引をするのかは知らないが、いることには間違いないぜ」
アーク。
その名を恨んでどれほどになるだろう。
人狼の集落を焼き払い、捕らえた子供を奴隷として商売道具にした外道の名だ。
あの日の凄惨な事件から逃げ延びた私は傭兵となったが、妹はアークの餌食になってしまった。
当時は人狼に人と同じような権利が存在せず、アークは極めて高い戦闘能力を誇る実働部隊を手駒にしているため、多くのものはアークの悪行に見向きもしなかった
彼らの極悪非道っぷりはとうに魔族のそれを凌駕している。
そんな組織のトップが情報を漏らすなど滅多にない。
この男の情報筋は分からないが、デマであろうと私が足を運ぶには充分過ぎた。
必ず殺す。
殺して妹を取り戻すのだ。
今日、私は狼となる。
決して喰らいついて離さぬ、暴虐の獣となれ。
「お前さん、さっき自分のことをにこにこしてるとか言ってたが、そんな表情はにこにこって言わないぜ?」
「ん? 何を言ってるにゃん?」
自分の表情の確かめようがないので、その言葉の真意は分からなかった。
今、どんな顔をしていたのだろう。
憎悪、憤怒、それらがおり混ぜられた顔。
果たしてそれは笑顔と言えるのだろうか。
いや、そんなことはどうでもいい。
全身からミシミシという音が響き、骨格が変形していくのを理解する。
全身から溢れ出す力を跳躍に変化し、駆ける。
勇者パーティはこれでおしまい。
元より世界の命運など知ったことではないのだ。
目指すはヤカシュ。
必ず殺す。
そのために技を磨いてきたのだ、死よりも恐ろしい苦痛を与えてやってから、じっくりと殺してみせる。
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