表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/44

最強たる由縁 前編

「無敵だと……? 状況が分からないのか、お前がたったの一度負けるだけでその少女が絶命するのだ。そうしたら次はその銀髪の娘、そして最後に貴様だ。既に絶望の顔が脳裏を過ぎるなぁ!」


 司祭だったはずの悪魔は大きく裂けた口を開いてよく喋る。


 銀髪の少女、つまりマキナは私ですかと表情を曇らせる。


「ああ、やれるものならな。ほら、続きをするとしようか」


「くぅ、小癪な。……いかん、勝負は圧倒的だというのになんだこの不安を煽られる気持ちは……!」


 俺はシューからカードを1枚引き、それに合わせて悪魔もカードを引く。


 もう1枚引くと、俺のハンドはKと3で13になった。


「いいね、ツイてる。スタンド(勝負)だ」


 俺がそう言うと、悪魔はどっと笑い出す。


「くぅ……あーはっはっは! 馬鹿め! なにか考えがあるように見えたが、とち狂ったなぁ! 13が21以下になる数字は8通りだが、21を上回る数字は5通り! 商人は常識的に足し算引き算もできないのかいぃ!」


 悪魔はカードを引く。


 悪魔のハンドは12となる。


「ほら、お前のは9通りだな。引いた方がいいんじゃないのか?」


 俺は悪魔にカードを引くように促すと、当たり前だと悪魔はカードを引く。


「ほへ?」


 悪魔の引いたカードはQ、つまり22でバースト(超越敗北)だ。


「まあ、当然だな」


 どうやらこの悪魔は足し算引き算が計算の限界らしい。


「な、なんだと……。俺様は相手の手札と自分の手札からどちらが有利かの確率を、人間の数百倍もある記憶力で全て暗記している! 俺様の計算に狂いはないはずだ!」 


 悪魔は動揺を隠せないでいるが、ブラックジャックのチートシート(相性早見表)を脳内暗記というのはまず基本中の基本だろうに。


 ギャンブルで賭けを行うのは具の骨頂、俺は勝てる試合にしか乗らない。


「そいつはご立派なことで。さあ、時は金なりと言うからさ、ゲームを続けようか」


「あ、当たり前だ!」


 その悪魔の危機迫る表情を見たマキナは、はっと手を叩く。


「なるほど道理で! ご主人様、これはゆ……」


 瞬間、マキナは消滅する。


「……マキナ!」


 俺の中で怯えていたペネロペは叫ぶ。


「大丈夫だよ、ペネロペ。マキナは神候補生だからな」


 全く、マキナの閃きの力は少し強すぎだ。


 この状況を理解してしまったら、こいつを倒すことができなくなる。


 謎解きは後だ、今はこいつを倒すことに集中しよう。


「そんなことよりお、俺様は引いたぞ。お前も引け!」


「はいよ」


 俺はカードを引く。


 ハンドは6と5で11、無論ヒット(カードを引く)だ。


 そしてもちろん21のハンド、美しきブラックジャックが完成する。


 対する悪魔のハンドは10。


「く、くぅぅ!」


 悪魔はカードを引く。


 いや、引いてないな。


 男は袖に隠したディスペンサーからAを手元に加える。


 それは恐らくイカサマによってキープしていたAであり、これで3枚目のAを投入したことになる。


 ワンデッキにAは4枚入っているので、おそらくあと1枚隠し持っているだろう。


 互いにハンドは21で引き分け、続けてプレイする。


 次は俺の手札は21、悪魔はバーストで俺の勝ちとなった。


「オー! マイッ! あと1度勝てばいいはずだのに! なぜ勝てない!?」


 悪魔は激しく頭を抑える。


 少し話をしてやるか。


「問題だ、目の前に食べ頃の少女が左、中、右に3人並んでいる。だがそのうち2人はお前と同族の悪魔で食ってもおいしくない。ここから本題。お前は左の少女を喰らおうとした時、真ん中の少女は自らを悪魔だと明かした。お前は最初に選んだ左の少女と右の少女、どちらを食らうべきか?」


 俺の問いに、悪魔は少し考える。


「そんなもの、どっちでも一緒だ!」


「なぜそう思う?」


「残った2人のうち1人が人間なのだから、確率は1/2に決まっているだろう」


 やはり思った通りの答えが返ってきた。


「不正解だ。確かに悪魔の少女の情報を知らなければ、どちらでも良かったかもしれない。だが、俺たちは既にハズレの情報を手に入れている。だから左の少女が人間の確率は1/3だ。2/3の確率で人間の右の少女を選ぶのが正解だったんだよ」


 悪魔の額には汗が浮かぶ。


 その表情は怯えだな、見ればわかる。


「まさかお前、初めから全部出たカードを記憶していたのか……?」


「それは当たり前だ。ついでに当ててやろうか。次に来るカードはダイヤの9、次はスペードの2、次は……」


「もういい! お、お前は一体……何なんだ!?」


「俺はただの商人だよ。職業柄ちょっとばかし計算に強いだけだ」


 自慢じゃないが、俺が勇者パーティに招かれたのは、実際は糸による支援能力ではなく、頭脳を評価されたからだ。


 こと頭脳戦において俺に勝てる生物は神であろうといない。


「さて、続けようか。魔道具の効果もあるし、逃げられないのはお互い様なんだろ?」


******

大事なお知らせ

******


『面白いかも』

『ちょっと続き気になるな』

と思われた方は、★★★★★を押してくださると幸いです。


私なーまんは読者の皆様からいただく高評価に一番達成感を感じますので、どうか★★★★★で応援いただけると励みになります!


広告の下に星の評価ボタンがあります、何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ