食卓とステータスオープン
俺とペネロペは向かい合って宿屋の個室で朝食を摂る。
俺の取った部屋は結構広く、二人で食事をする時には返って寂しい雰囲気を与える。
「ふにゃ〜ん……」
先日手に入れたロリ幼女こと神の器マキナは光を返さない手のひらサイズの漆黒のキューブとなって宙にぷかぷかと漂っている。
どうやらマキナはまだ寝惚けているらしいが、質量や重量などがこの世界の法則の外側にいることはよく分かった。
流石は神の器といったところだろうか。
まあ、今はマキナよりもペネロペのことだろう。
彼女はただ無言で無表情で、朝食の黒色パンを手にしては頬張っていく。
昨日の怯えきった餌付けのそれとは大きく異なる、ごく普通の食事風景が、そこにはあったのだ。
そのなんてことない食事風景が、俺にはとても嬉しかった。
昨日の一件以来ペネロペの角と尻尾は少し出たままになってしまっているようで、フードを被せたままの食事でなければ完璧だったろうに。
そういえば角が生えてから少し身長が伸びたような気がするが、気のせいだろうか。
具体的には父親に対して反抗的な態度を取るようになると言われる年頃程度の容姿に思える。
そしてそれに昨日よりも少し無口になってしまったように感じる。
出会って間もないため判断材料が少ないが、やはり少し大人びたか?
それに彼女をよく見ると、とても綺麗な子だなぁと思う。
顔立ちはフードを被っていても分かるほどに端正で、髪は絹のように滑らかだった。
俺はそんなペネロペに反抗期のように突き放された態度を取られたらどうしようかと頭を抱えそうになっていた時、キューブ状に縮こまっていた神器は覚醒したらしい。
「ふにゃ〜あ。あ、おはようございます、ご主人様」
「おはようマキナ。理屈で言えばほぼ機械でできているホムンクルスも睡眠を必要とするんだな」
俺が彼女に答えると、にゅるりとペネロペそっくりの人型に変形し、そのまま素早くパンを手に取る。
「ホムンクルスにも脳に当たる基盤を冷却しなければ、そりゃしんどいですよー。うっ、か……硬いっ!」
黒色パンの外側から一気に齧りつこうとしたマキナは、その食品とは思えない驚異的な硬度にしてやられたようで、机の上でのたうち回っている。
なるほど、痛覚もある。
これはほとんど人間と変わらないと考えてよさそうだな。
やはり彼女はまるで機械らしくなく、キューブ状の姿の時でもどことなく有機的な存在感を与えてくる。
逆にペネロペは人間だが、その凛とした目元や口調からどことなく無機質的な印象を受けるため、二人は正反対のように感じる。
「あ、寝癖ついてますよ、おねえちゃ〜ん」
マキナはわしわしとペネロペの頭を触り、無邪気な笑みを浮かべながらペネロペの髪を整えていく。
「ん。ありがとうね、マキナ」
マキナ曰く、これからはペネロペとは双子の妹という設定でやっていく予定らしい。
見てくれは双子姉妹そのものだが、方や悪魔憑き、方や神の器で成り立ちも全く異なる。
果たして本質を見破れる人はこの先何人現れるだろうか、なんて考えてみたり。
さて、もうそろそろあの話をしてもいい頃合いだろう。
「なあペネロペ、君の故郷ってどこか分かるか?」
俺は彼女を故郷へと送り届けなければならない。
今までは彼女の怯えた感じから聞くのを躊躇っていたが、ドワーフの迷宮を踏破した今ならば俺にも明るい表情を見せるようになった。
いけるか……?
「分からない。でもどこかあたたかいお家でおかあさんが毎日お酒を飲んでいて、たまにりんごを剥いてくれて、それが甘かったことは覚えてる。あとは……雪?」
故郷は分からないようだが、それだけ情報があれば探しやすくはなるというものだ。
特に大きなヒントとなるのは雪と酒だ。
雪なら北だ、北の地方を探せば見つけやすくなるはずだ。
それに暖かい、というのは恐らく気候の話ではなく、部屋のことだろう。
なぜなら寒い地域であればあるほど防寒には気を使うし、そういうところには大抵暖炉がある。
そしてそれを裏付けるのは酒だ。
どういう理屈か、酒は身体を温める。
殺菌作用もそうだが、酒はおしなべて寒い国でより多く嗜まれやすい。
そのヒントを頼りに、俺は地図を広げる。
「そうだな。常に雪が降ってる気候の地域はここより上のはずなんだ。海は見えたか? 川は?」
そう問い質すと、ペネロペは顔を押さえる。
「う、うぅ……」
どうしたのかと覗き込むと、なんと泣き出してしまっていたようだ。
……しまったな、少し近づきすぎた。
彼女はつい先日まで奴隷だったのだし、急に家族のことを思い出させるのも酷というものだ。
これは俺の失敗だ。
「ああ! そういえばご主人様、ステータスの可視化とか興味ございます? ていうかやっちゃいますね、えいっ!」
マキナが突然空中に四角形を描くと、そこに半透明な氷の板のようなものが浮かび上がり、いくつも数値が羅列してある。
今までの会話とは全く脈絡のない話だが、今はそれがありがたかった。
マキナのフォローに心の中で感謝を告げる。
「ステータスの可視化……。聞いたことがあるな」
ステータスの可視化、つまりこれが俺の強さの指標というわけか。
それは本来成人を迎える際に聖堂で受けることの出来る鑑定の義で職業が分かる程度のものなのだが、マキナのそれはさらに詳細に書き込まれている。
ドワーフの神器が言うのだから、これは正真正銘俺のステータスなのだろう。
*
ハル
種族:人間
ジョブ:糸使い
ジョブレベル12
型:大器晩成
LV.98
HP:50439
MP:50001
魔力:1230
力:9990
知力:2456
防御力:992
魅力:1032
素早さ:7880
運:832
成長率
HP:B
MP:B
魔力:B
力:D-
知力:A
防御力:C
魅力:B
素早さ:B
運:B
パッシブスキル
*糸術EX
レアリティ:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 熟練Lv.51
弓術の派生スキル。類希なる糸を操る才能を持つ。このスキルの保有者が操る糸は軽々しく森林を切り倒すほどの破壊力を持つが、真価を発揮するのは後衛の時であり、糸を介して味方を操作することで、パーティ全体の連携力を文字通りの一糸乱れぬものにすることができ、身体能力もまた飛躍的に向上させることができる。
*近接武器の扱いF
レアリティ☆☆☆☆ 熟練Lv.43
このスキルの所有者は剣や斧の才能に恵まれておらず、握るべきではない。
*騎乗D
レアリティ☆ 熟練Lv.41
Dランクの騎乗スキルを持つものは秀でた騎馬の技術を持っている。こと騎乗戦闘において有利に立ち回ることができる。
*話術C
レアリティ☆☆☆ 熟練Lv.58
優秀な話術を持つ証。このスキルを持つものが語る言葉は、小さな村や集落を栄光や破滅へと導くこともある。
*──ひもの真理???──
レアリティ:測定不能 熟練Lv.0
解き明かしてみたら、始まりはひもであった。
アクティブスキル
*魔力の糸
レアリティ☆☆☆☆☆ 熟練Lv.34
魔法の糸によって対象の神経、心理、身体を巡る魔力を操作することができる。また、魔力の糸は常に単一方向へと魔力が流れる性質を持つ。
*物理の糸
レアリティ☆☆☆☆ 熟練Lv.38
糸を操作することができる。糸は結べるし、断ち切る事もできる。
*魔力奔流
レアリティ:☆☆☆☆☆ 熟練Lv.32
魔力の糸の単一方向へと魔力が流れる性質を利用した派生スキル。魔力糸を魔法陣のように張り巡らせることで、空気中の元素を集め、無詠唱かつ無尽蔵に魔法を使用することができる。
*縫合治癒
レアリティ:☆☆☆☆☆ 熟練Lv.47
魔力糸と物理糸を用いて縫い合わせ、見た目はほぼ完璧に治癒することかできる。ただし、縫い合わせた後に細胞同士が自然に結合して初めて治療完了なため、戦闘中などの即効性の求められる場面では役に立たない。
*|限界解除術式・真体降臨
レアリティ:☆☆☆☆☆☆ 熟練Lv.26
対象の身体を構成する靭帯などの糸を切って繋ぎ、身体能力の限界を超えさせる。
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