悪魔憑きと神候補生
「──おかえりなさいませ、ご主人様っ! 」
ペネロペに瓜二つで、ちょっとエッチだった。
明確な違いといえばペネロペは彩度低めの金髪なのに対して、眼前の少女は彩度低めの銀髪ということくらいだろう。
「──っ!」
ペネロペはその少女をじーっと見つめ、表情ひとつ変えないままに頬を真っ赤に染め上げていた。
「もー、視線がえっちですよ、おねえちゃん」
紋様の奥に佇む少女は上目遣いでペネロペに視線を返す。
「これは、どゆこと」
ペネロペが漠然と呟く。
「それはですねー、人体生成シーケンスのモニターだったご主人様の理想の女の子像がおねえちゃん、もといペネロペちゃんそっくりというかそのまんまでしたので、こうロリっとした身体になりました」
バカな、俺はただちょうどペネロペみたいに猫っぽくてでロリで貧乳でロングでやや吊り目、髪の毛は丁度ペネロペくらいのが好みなだけであって、断じてロリに恋愛感情を抱くようなロリコンではない。
心の奥底にロリっ子とイチャイチャしたいとかそんな願望は決して微塵もない……わけではないが、これでは俺は性犯罪者予備軍だと遠回しに指摘されてしまっているようなものではないか。
いや、仮にもそのような可能性が微粒子レベルで存在するのかもしれない。
だが、決してそんな事実は認めない。
俺はロリなんかに屈しない。
俺ってば仮にも勇者パーティであった男だよ。
こんな生意気そうな、ペネロペから大事な要素である口数少ない控えめで大人しい無機質な感じを取ってしまった有機的なガキなんかに負けるわけがない。
俺はその新たなる幼女をじいと見つめる。
これは透き通ったむにむにの幼子特有の肌を眺めて感触を妄想している訳ではなく、かといって細い身体なのに適度におなかがもにっとしていて完璧な幼児体型だとか考えているわけではなく、そいつと対峙するために必要な覚悟の証なのだ。
「で、ご主人様っていうのはどういう風の吹き回しだよ。野望に満ちた古ドワーフのホムンクルスなんだろ?」
俺はそこの幼女のように凛と胸を張って言葉と適当な布を送る。
ホムンクルスであろう幼女は布で軽く身体を覆うと、続ける。
「この部屋に辿り着けるのは私がここで眠っている真実を知っている、設計に携わった人間だけのはずでしで、彼らは神々からも命を狙われる存在でした。神を作っちゃうなんて罰当たりだったんですね。ですので。彼らは誰か一人だけでもたどり着ければいいように、最初にこの部屋を訪れた者だけを主として認識するように設計していたのです。そんなところにご主人様が現れた。つまりこの状況はヒナ鳥のすりこみと同じですね」
なるほど、概ね合点がいったが、最後の例えは明確に矛盾していた。
「そうかな、これはすりこみとして成立していないんじゃないか。お前は明確に俺を産みの親だと認識していないように思える。意思があるんだから、逆らったりできるんじゃないのか?」
「『意思』ですか。面白い質問ですね。そも、意思とはなんでしょう。私は機械ですので、与えられた入力に対して適した出力をしているに過ぎません。その話は大変興味深いのですが、それはおいておきます。とりあえず私はご主人様の命令に逆らえないものだと認識していただいてかまいませんよ。手を繋げと命じれば恋人のように手を握りますし、キスをしろと命じればベロチューする他ないでしょう」
なるほど、興味深いな。
俺はロリコンではないが、この美味い話に興味が湧いた。
「もう二つだけ聞かせてくれ。一つ、お前は何者なんだ。ただのホムンクルスではなさそうだが」
彼女は初めに、神話の始まりだの、神の金型だのと面白いキーワードを放っていた。
俺の直感が、彼女はただのホムンクルスではないと告げている。
「ええ、その通り、私はただのホムンクルスではありません。私は神です。ドワーフによって産み出された、最初の人造の神。正確には、そうあるべしと定められた究極の生命。神の座へと至るための最高の器。おしなべて神候補生、とだけ覚えておいてくださいね」
どうやら俺は随分立派な骨董品を掘り当ててしまったらしい。
「ああ、分かったよ。最後に……一番大事な質問だ、よく聞いてくれよ。お前、名前はあるか?」
「私はマキナ、神候補生のマキナです。よろしくお願いしますね、ご主人様っ!」
俺はその時、心が踊っていた。
神の器が手に入ったから?
そうではない。
勇者パーティから突き放されて孤独だった俺に仲間ができたから?
半分正解だろう。
ロリっ子にお近付きになれたから?
正しくこれが俺の答えだ。
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