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婚約内定(確定)

「追放させる気無いだろ」?気のせいです。

そうだと思わない限りそうじゃない()

あれから10日くらい経った。


あの時顔見知りを作っておきたかったが、あのまま戻ったら大変だったと思うし、印象も最悪だったと思うので、次の機会に期待するしかない。


婚約者をこの歳で見つける家もあるらしいから、次で印象を上げといた方がいい事には違いないだろう。

元の世界ではこういう事には縁が無かったから、少し期待している。


「エルお兄ちゃん!この本読んで!」


アイシャが自身より一回りほど小さい本を抱えて持ってきた。


アイシャは金色の髪に青い目を持った私の妹だ。

ちなみに私も私の両親も同じ金髪だが、眼の色まで一緒なのは父さんで、オレンジ色の瞳を持っているのが母さん、そして私は黒なのだが、転生前の影響でも受けたのだろうか。


それより凄く分厚いが、どんな本なのだろうか。


よく見ると表紙には絵が書いてある。

ふむ…、どうやら童話の絵本みたいだ。


「いいよ。じゃあその本を渡してくれる?」


うん、と頷いたアイシャはその本を渡して、あぐらをかいていた私の足の上にちょこんと体育座りをした。

この体勢で読み聞かせを聞くのが最近のお気に入りらしい。


見てみるとその絵本は、勇者の冒険譚を沢山集めた本だった。

最初から読んでいくのも面白くないので、適当に開いた所の話を読む事にした。


半分くらいの所を開いて、そこの話の始まりまで戻る。


「じゃあ読むよ。」


そう言って、その絵本を聞き取りやすい声で読み上げる。



※※※



どうやら勇者は王様に命令されて、南の魔竜を討伐しに行く話らしい。


その勇者は故郷を守る為、神より授けられた「(  てん)(  こう)(  ゆう)(  しゃ)」というスキルを駆使して南の山に向かう。


途中で出会った同志や危険な生き物と紆余曲折有りながらも、味方となり魔竜を討伐しに向かう。


そして、魔物を討伐しながら南の魔竜が居る山頂に登るが、そこには魔竜の死骸だけがあった。


どうやって魔竜が王都に被害を出すことが出来たのか混乱していた所に、魔竜に王都が襲われているのが見えた。


急いで下山した勇者一行は、魔竜が暗い雲に隠れて消えたのを偶然目撃して、王都に報告しに行く。


勇者一行は王都に戻った時、再び魔竜に襲われるが勇者一行は魔竜を攻撃せず、周囲を捜索して怪しい魔術師を撃退し、悪者をこらしめた。


勇者達は見た目に騙されなかったからこそ、悪者を退治できたのです。


そして勇者たちは平和に暮らしましたとさ。



※※※



童話ってこんなにツッコミどころの多い話だったか?

悪役の魔道師を懲らしめたとか言ってたけど、絶対処刑か拷問ルートだろこれ…。

そして、勇者たちは王様の奴隷エンドってところかな?

王国の民は幸せに暮らしました。めでたしめでたし。

…で終わるはずがない。

希望に溢れた話しか残ってない時点で、闇がどれくらい深いか分かる。


まあ、うんぬんかんぬん童話にツッコんでも仕方ないか。


「読み終わったよ、アイシャ。……アイシャ?」


よく見るとアイシャは寝てしまった様だ。

まだ昼なんだが、今から寝て夜に寝れなくなってしまわないだろうか。


でも、気持ち良さそうに寝ているのを妨げるのは忍びない。


仕方が無いので寝室に運んで、ベットに寝かせて掛け布団を掛けておく。


そういえば、あまりこの世界の童話を聞いたことが無かったな。


そう思い、さっきの本を読み進める。


へえ、勇者というスキルにも沢山の種類があるのか。

さっきの「天降の勇者」だけでなく、「煌臨の勇者」や「反核の勇者」なんてのもいるらしい。


そして、「勇者系スキル」の一番の特徴が、聖剣を持つというスキルを併せ持つ事だ。


それだけでなく、勇者であるだけで身体能力の向上の特典が付いてくるものだから恐ろしい。


ただ勇者は一世代に一人しか発現しないとか。


勇者の発現に気付かないと大変そうだが、こんなばかばかしい性能を持っているなら妥当だろう。


そんなことを考えていたら、私を呼ぶ声が微かにだが聞こえた。

多分この声は父さんだろう。


ここにいても仕方ないので、寝室から出た。


胃が痛くなってきたが、気のせいだろう


…と思うはずも無く、逃げる事にする。


勘には従った方が得なのだという事を嫌というほど学んだばかりだ。

声のする方とは反対の方に行き、こっそり外に出る。



※※※



「家ですら安らげないなんてどうすればいいのやら。」


思わずそう呟いてしまう。


あっ…しまった、急いだせいで本を持ってきてしまった。


折角だし、もう少し読んでみるか。

どんな話があるか、気になるので目次を開く。


「ん?何だこれ?」


見ると、薄いしおりが表紙裏に挟んであった。


取り出して見てみると、しおりに何かが書いてある。


『ボクのゆめはしあわせなせかいにいきることです』


「…夢ねぇ。」


誰の願いだろうか。

とりあえず幸せな世界にいない人だというのは分かるが…。


というか、このしおりは何故ここに有るのだろうか。


この本もアイシャが持ってきたものだから、後でアイシャに聞いてみるか。


「うわっ、冷たっ!」


夕立ちが来たのか。


しおりを本に挟んだ後、急いで屋根のある所に入り込む。


入る時によく見ていなかったが、ここは馬小屋だろう。

馬の息が聞こえる。


雨雲のせいか、暗くて何もできない。


そのまま意識を刈り取るように眠ってしまった。



※※※



ここはどこだろうか。


気が付いたらここにいた。


とても暗くてとても静かだ。


再び眠りにつこうとしても眠れない。


すると、誰かが近づいてくる。


暗くて静かなのに分かる、不思議だ。


お前は誰だ!


言ってみたくて、言ってみたはずだが声に出ない。


だが、向こうは理解したみたいだ。


僕は神だよ。


ホントに神か?


君は転生者だね。どうしてここにきたんだい。


ココハドコ?ワタシハダレ?


なる程、未練を残したまま死んだせいだね。

でも君はここではその未練は果たせないんじゃないか。


ダメだ話が通じねぇやつだ。


他の未練もあったのか、君は幸せな世界に生きたいのかな。


vgbhんjmkzsxdcf!!!qwrtypxdcfっっ!


…さっきから何を言ってるんだい君は。


\(^o^)/


本当に何がしたいんだ君は!


あ、終わりましたか。お話長いっすね。


…。


(・ω・)


^^


(((・Д・)))


…。


そういえば、なんでここに来るはめになったんですか。


それは後で分かるだろう、では。


いや教えてくれないの、なんで。


もう時間切れだ、誰かのせいで。


おい…「ーーーー、ーーーー!!」



※※※



「エル様〜!!あっ!こんな所に居たんですね!ここで寝たら風邪ひきますよ!」


目を覚ました。


相変わらず暗いままだが、戻ってきたという実感がある。


「ミシェルか、おはよう。」


「おはようじゃ有りませんよ!もう夜です!」


どうやら雨はもう止んでるみたいだが、暗いのは夜になったせいらしい。


立ち上がろうとすると、本が自分のお腹の上にある事に気付く。


本を持って起き上がろうとすると、ミシェルが手を差し伸べてくれた。

優しい。


「皆さんエル様を心配してましたよ!」


…なるべく早く帰ろう。


外に出ると、晴れたのか月明りが辺りを照らしている。


そういや、さっきの出来事…。

夢とか未練とか言っていたが、そんなものがこんな自分にあるのか?


「ねえミシェル。」


「どうしましたか?」


ミシェルは影で黒くなった瞳に疑問を浮かばせた。


この子感情がすぐ顔に出るな…。

昨日までこんな感じじゃなかったと思うけど、機嫌直してくれたのかな。


「君の夢って何?」


そう言うと、少し迷ったふうに頭を捻る。

その後、恥ずかしそうにしてこっちを見てきた。


「私の夢は私だけの勇者様に助けてもらう事ですよ?」


「そう…か。」


恥ずかしそうに言うのは分かるが、なぜ疑問形なんだ?


「なんでそんな反応するんですかー!」


いや仕方ないって。


言葉に出来ないほど幻想的な風景に黙らされたとは言えない。


そんな思いが伝わるはずもなく、ミシェルはすねたからか、月に照らされて銀に輝いた髪をいじっていたが、それすらも幻想的に思えた。



※※※



「ただいま」


「あーーっ!エルお兄ちゃんだー!」


グエッ

アイシャからタックルを食らった。

アイシャは痛くないのだろうか。


「どこ行ってたの…?」


「ちょっと外でお昼寝していただけだよ。」


「勝手にいなくなっちゃったから、怖い夢みたのに誰もいなくて怖かったの…。」


思い出したせいか、泣きそうだ。

まずい、どうにかしないと。


「あー、アイシャ、お兄ちゃんが付いてるから絶対安全だからな!絶対守ってやるからな!だから絶対大丈夫だぞ!」


「…絶対?」


「それに父さんや母さんだっているんだ。もう怖いことなんて無いだろ!」


「絶対の絶対?」


「え、ああ!」


するとすぐに元気になった。

何か間違えた気がしてしまうのはなぜだろう。


「そういえば、あの本はどこから持ってきたか分かる?」


「えっとね、この階段の裏の下!」


いやこれって宝物殿じゃないですか。

年に一度くらいしか開かないやつ。


「どうやって入ったの?」


「ここの隙間からだよ!」


まさかの通気口。

アクションゲーかよ。


「これ戻せるかな?」


そう言って、本を取り出してみたらしおりが無くなっていた。

あの馬小屋で落としたのかな。


「うん!いいよ!」


「あ、ちょっと待って。」


アイシャは聞く耳を持たずに、そのまま宝物殿に潜ってしまった。


どうしよ。


「あとでいっか。」


「エル!外に行くなら、早く帰って来なさい!」


「勝手に外に行かないで、一言言ってからでも良かっただろうに。」


一言言っては意味がないのですよ、旦那ァ。


というか来るのが早くないか。


多分いつの間にか居なくなっていたミシェルが連れてきたのだろう。


こういう時はすぐ謝るに限る。


「馬と遊んでいたら、雨が降ってしまったのですぐに帰れませんでした。ごめんなさい。」


勿論、ただ謝るつもりは全く無い。


「そう。それならそう言ってくれればよかったのに。」


「次からは気をつけるんだぞ。」


こんなにも単純だと心配になってくる。


「そんな事よりこれを見てくれ!」


そう言って取り出したのは、王城の描かれた便箋、つまり王家からの手紙だ。


さっきと同じ嫌な予感がする。

胃が痛い。


「そんな事よりアイシャはどこにいるのかなぁ。」


「ん?アイシャはいい子だから外には出ないだろう。」


つまり私には信用がないって事ですね。


まずい。


「これはエルの事だからな。エルが開けた方がいいだろう。」


そう言って、便箋を渡してきた。


渋々開けて、中に入っていた手紙に書いてあった長ったらしい文を読む。


中身を要約すればこうだった。


第三王女と婚約してやってもいいから王城に来い。

もうほぼ完全同意の上、身分も申し分無いので、確定事項に殆ど等しい。

が、形式上顔を合わせて契約を行わなければならないので来週までに顔を合わせろ。


との事だった。


あれ、いつから詰んでたっけ。


そんなふうに考えて固まっていたのが、アイシャが宝物殿から出てくるまで続いた。

5話目に追放させたかったので色々詰め込んじゃいました。

何故?って、5話目ってキリがいいでしょ()

次追放回やりますええやりますとも。



あとは伏線回収したりばら撒いたりするだけですねー。

因みにミシェルは主人公より歳上です。

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