行きは怖くて帰りも怖い
追放は多分この次の次になると思います。(チラッ(p_-) [予定表]
「おお…。」
大広間に出てみれば、すでに沢山の人が待っていた。
主役は後から登場ってね。
いや、主役じゃないけど。
大広間の中心には人だかりができていた。
あのあたりに王女様がいるのかな?
「すごい人だかりで姫様が見えないな。エルだけ先に会ってくるといい。」
えっ、嘘でしょ。
「冗談だからそんな顔するな。」
感情が思ったより顔に出やすいみたいだ。気を付けなくては。
よくみると列になって並んでいるみたいで、人が多いせいか蛇のように曲がっている。
「列になってるから並ぼう。」
列にならないと会えないとかアイドル扱いだな。
そして、まるで処刑待ちの罪人の様に気分が良くない。
前に進むごとに胃が痛くなる。
「姫様はエルと同い年だから仲良く出来るといいな。」
「うん。友達になれるかなぁ?」
「エルならきっと出来るわ。」
同い年と会うのは実のところ、ここが初めてだ。
王女様以外の人とも接点を作っておきたい。
共通の話題を見つける事からが王道だろうか。
この年頃は何をやってたっけ。
そういえば、戦隊モノのごっこ遊びをやったなぁ。
いつも悪役だったが。
他の思い出は…おもいで…オモイデ……?
ウッ…急に頭痛が。
「エル、さっきから顔色が悪いが大丈夫か?」
「きっとエルは緊張しているのよ。みんな初めはそんなものよ。」
緊張?ただ緊張しただけだったなら、どれほどいい事だろうか。
「あーちょっと、御手洗いってどこにあるか分かる?」
「それなら確か、さっきの待合室の近くにあったが…、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから。」
そう言って、来た道を戻っていく。
今は一刻も早くここを抜け出したい気分だ。
※※※
「はぁ。」
結局トイレには行かず、外に出て新鮮な空気を吸っている。
外に出ると、ちょうどそこには中庭があったから、ストレス発散に良さそうなので休憩しすることにした。
しっかし綺麗な中庭だなぁ。
ストレスに染まった心を洗い流してくれる。
「ねえ。」
「はい。」
とっさに返事してしまったが、この声は誰だろうか。
「えと、どちら様でしょうか?」
言いながら振り向いてみれば、同い年くらいの綺麗な女の子がこちらを不機嫌そうに見ていた。
綺麗なプラチナブロンドのロングヘアに赤色の瞳で、それらを引き立てるかの様な白い肌に、赤色のドレスを着ていた彼女は、まさに絶世の美女だった。
少し見惚れていると向こうから口を開いてきた。
「私の事を知らない?知ってて当然じゃないの?まあ今日まであまり交流してなかったから仕方ないか。」
少ししか話してないが、性格の方はあまりよろしくなさそう。
「私はレナ・クラーク。この国の第三王女よ。」
流れるような動作で挨拶してきた。
こういう時は挨拶を返すのが礼儀か。
「僕はフューエル・ウィルベルと申します。以後お見知り置きを。」
我ながら完璧に決まった。
王女といえどこれには文句も出まい。
てか王女って何だっけ。
「あなた、私を王女と今知ったのにあまり驚かないのね。残念。」
こんな王女は王女とは言わない。
今まで描いてきた理想の王女が無残にも消え去ってゆく。
何故こんな王女に緊張していたのか、自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「‥ってそうじゃなくて、中庭は立ち入り禁止だから出て行ってくれない?ここは私の庭園だから変なことをされると嫌なの。」
「えっ、君がここを管理していたのかい?すごい綺麗だね。」
「ふふん、当然でしょ。」
ちょっと照れてるのがチョロくて可愛い。
もしかしたら、これくらいの年頃はこれが普通なのかもしれない。
人ををよく見ないで、勝手に理想を押し付けて勝手に失望するのは、自分のよくない癖になってるな。
改善しなくては。
ところで、どうしてここに王女がいるのだろうか。
「なぜ王女様はここにいるのでしょうか。」
そう言うと、王女はあからさまに慌て出した。
「それはあなたには関係ないでしょ!そんな事はどうでもいいから早くこの中庭から出て行って!」
「どうでも良くないです。答えるのが嫌なら王女様がここにいる事を伝えますよ。」
嫌な感じで悪いが、恐らくこう言えば効果抜群だろう。
「それは…うぅ……。もうっ、分かったわ、言えばいいんでしょっ。」
どうやら考え方は間違っていなかったらしい。
やっぱり勝手に抜け出してきたんだろう。
「……私はああいうのがあまり好きじゃないの。なんだか周りの人に値踏みされて勝手に価値を付けられてる気がして。」
マジか、そんなひどいやついたのか。
ん?私も同類じゃないか。
「だから私最初は断ったんだけど、お父様が、伝統だから、みんなやったからって言うから出るしかなくて。」
真面目な所、王女の事がだんだん分かってきた気がする。
「実際出てみたらやっぱりみんなそういう目で見てきて。ずっと自分じゃない何かを見続けてきて。そういうのが怖くて…、でもどうしようもなくて…。だからこうやって勝手に抜け出してきて……っっ!」
気付いたら王女様の頭を撫でていた。
よく分かった、この人は自分とは違う。
敬意を払うべき人だ。
王女様はまだ子供なのに嫌な事も我慢して受け入れている。
それに比べて私はこうやってすぐ逃げ出して…。
自分が自分で嫌になる……事はないが。
ん?普通は尊敬している人の頭を撫でたりしないって?
そこは、ほら、アイシャも泣きそうな時は、こうやってあやしているしぃ?
「大丈夫、僕も同じ。ううん違う、僕の方がもっとひどい。何せ僕は戦う前から逃げてるんだ。それに比べてレナ様は凄いよ。ずっと頑張ってきたんだ、少しくらい休憩しても別に良いんだよ?」
今日の自分冴えてないか?
今なら勝手に中庭に入った事も泣かせた事も無かった事にして抜け出せる気がする。
「…………名前…。」
名前?どゆこと?
「名前勝手に言わないで。」
「えぇ……?」
そんな理不尽な。
「…あなたはあの人達と違うのね。」
そりゃさっき改善する事にしましたし。
「僕は王女様が頑張っている事を知ったので。」
「…王女様って言わないで。」
「んーと、王女さん?」
「むぅ…、レナで良い。」
言ってる事矛盾してません?
あと泣いた顔で拗ねるの可愛い。
やばい、性癖がこじれそうなので早く戻る事にする。
「じゃあレナ、僕は先に戻ってるから、落ち着いたら戻ってきなよ。」
「え、あ、ちょっと!」
せっかくの逃れるチャンスを見過ごす事はできないので、悪いが王女様の事は無視させてもらう。
※※※
「ただいま。」
「エル、遅いじゃないか。本当に大丈夫だったのか?」
「体調が悪いなら待合室に先に戻っててもいいのよ。」
マジっすか。
でも半ば約束まがいのことを王女様としたから、勝手に帰って反故にするのは良くない。
「もう楽になったから大丈夫だよ。」
「なら良いんだが…。本当に大丈夫か?」
「心配しすぎだよ。」
そう言うと、父は納得いかない顔で黙った。
それから少し待つと父が口を開いた。
「エル、そろそろ順番が来たようだぞ。」
順番が来た、という事は王女様は立ち直ったのだろう。
それにしては順番が来るのが早い気がする。
その理由は前の人達を見て分かった。
相手にされてないのだ。
正確には世間体を保ちながら相手をあしらっている。
一体誰に似たのだろうか。
そうやって、あっという間に自分の番が来てしまった。
「公式の場では初めましてかな。私はウェンリー・ベルフィンと申します。こちらが妻のレーラ、そしてこちらが息子のフューエルと申します。以後お見知り置きを。」
ナイス父さん。トンデモ情報が出た気がするが気のせいだろう。
「私はレナと言います。知っての通り、第三王女につかせていただいております。」
そう言った王女様は少し父さんと世間話をしてから、こっちを見てきた。
何故こっちを見るんですかねぇ。
「ほら、エル。自己紹介しなさい。」
と父さんに小声で言われた。
「初めまして王女様。先程ご紹介に上がったフューエルと申します。」
初めまして、の所を強調したので多分意図は伝わっただろう。
すると王女様は拗ねたのか黙っている。
別に初めましてでも、そんなに気にする事では無いはずだが。
「親しみの印にエルと呼んでも構いません。」
「……!」
「エルと呼ぶのは嫌でしょうか?」
「王女様は無しにしてって言ったよね…!」
いきなり近づいてきた王女様は耳元でそう言った。
小声で叫ぶとは器用だな。
だが、この状況は非常にまずい。
「あ、ネクタイがずれている事を教えてくれるなんて優しいなぁ〜!こんな方と結婚出来る人が羨ましい限りです!」
そう言って王女様から離れる。
適当におだてつつ、周りへの対処も怠らない。
そして母さんに救援のアイコンタクトを図る。
すると母さんは頷いた。
よし!
母さんは父さんに話しかける事にした様だ。
いや、母さんじゃ止められない事じゃないよね!?
何故か母さんに頼っても意味がない気がしたので、見苦しい言い訳だが使う事にする。
「あー、何だか頭が痛くなって来たー。早く休まないと治らないやー。」
と言ってその場から逃げだす。
勿論呼び止める声は無視した。
待合室の場所は覚えているから、そこに入る事にしよう。
※※※
待合室に駆け込んで、ドアを閉める。
「はぁ、助かった。」
なんか今日は逃げ出してばっかりだ。
そんな事を考えていると、後ろに気配を感じた。
ドアを閉めた体制なので部屋の中はあまり見ていない。
ここは個室で誰も入っていないはずだが。
…もしかして間違えた部屋に入ったのだろうか。
だとしたらまずい。
非常にまずい。
「あの…」
「すみませんでしたっっ!!」
そう言って部屋から出た。
「何がすみませんなんだ?」
部屋から出たら父さんがいた。
やっべ。どうしよ。
やっぱり怒っているのだろうか。
「いや、部屋を間違えたみたいで、はは…。」
「……はぁ。」
ため息って余計に怖くなる。
「姫様と喋って緊張したのは分かるが、あれは良くないだろう。」
うーん、なんかうまく勘違いした様で何より。
「あと部屋はここで間違ってないぞ。」
「えっ、でも誰か人がいたよ。」
「エル、自分から言ったのに、もう忘れたのか。」
父さんが目線を私の後ろに回したので、後ろを見てみるとそこには、不機嫌そうなミシェルが顔だけ見せていた。
「エル様、私の事忘れたって本当ですか。」
「いや今は急いでいたから頭が回らなくて…、とにかくごめんね!」
「なら私に言った事覚えてますか?」
なんて言ったっけ。
あっ。
「えっと、許してくれてありがとう?」
「許したとは言ってないですが、覚えててくれたので良いです。」
そう言って、ミシェルは人が通れるくらいまでドアを開けた。
そうなると自然と全身が見えてくるもので、
「メイド服?似合ってるね。」
「メイドになるように決めたので。」
実際、洗ってもらったおかげか、綺麗な艶を出している黒髪に、はっきりと見えるようになった白い肌、そしてそれを混ぜたかのような灰色の瞳が、モノトーンなメイド服に凄く合っていた。
そしてなんか会った時より冷たい感じがする。
まあ仕方ないか。
すると、母さんがこっちにくるのが見えたので、ここに来た理由を思い出す。
「父さん、頭痛がするから寝ててもいい?」
「あれ本気だったのか?まぁ、さっきから気分良くなさそうだし、別に良いか。」
そう言ったのを聞いて、部屋に入って横になる。
今日はいろいろな事が有りすぎて、疲れが溜まってるからすぐ眠れそうだ。
すると母さんが部屋に入ってきたようだ。
「エル、緊張していたのは分かったけど、あれは良くないんじゃない?」
夫婦して同じ事言ってるよ…。
「でも大丈夫。あとは私達に任せなさい。」
嫌な予感がしたが、よっぽど疲れていたらしく、そのまま眠ってしまった。
そして次に起きた時は、もう家に向かう馬車の中だった。
次、妹出ますよ
↓サブタイ候補だったやつ
庭園の少女
王女様はグレました
王女はヨウジョ(ボソッ
…はっ
お縄だけにはつきたくないぃぃぃ!!
警察だけは勘弁してくださいッ!!!
警察だけわァァッッッ〜〜!!!!!