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空から来た魔女の物語 -site B-  作者: 咲雲
A氏のバランス破壊活動
32/70

31 装備確認 ~使ってみる~

評価、ブックマーク等ありがとうございます。


 アームガードを装着し、手袋をはめた。

 懐かしい装備。一目で悪とわかるロゴがないのはちょっぴり残念である。

 ベルトは長さを調節しつつ、手袋に通して固定できるようになっており、金具も邪魔にならない。表面はなめらかで不要な凹凸がなく、重さは意識しなければ感じない程度だ。

 何度か肩をぐるりと回し、肘を曲げたりしても違和感がない。


「ここで使って大丈夫?」

《はい。まずはこの場でお願いします》

「了解」

 

 少しドキドキしながら、言われた通りに念じてみる。


 ――ロック解除 〈フレイム〉――


「おっ……?」


 何かがかちり、と噛み合う感覚があった。

 続けて念じてみる。


 ――展開 アサルトシールド――


「…………おおっ!」


 光の盾が現われた。

 形は正六角形。角が上下にあり、中は氷の結晶を思わせる図柄だ。

 極細の光の線は、明るくも眩しくもなく丁度いい。それが四枚、私の周りで静止している。レベル上げは関係ないので、最初からゲーム設定の最高枚数だ。

 光の線以外の部分は完全に透明で、視界は良好。

 前方と左右だけでなく、背後の一枚も認識できた。己の純粋な第六感ではなく、補助脳を介して位置情報が感覚的に伝えられてきたのだ。

 不可視にすると、光の線が消えた。けれど、見えないのにそこにあるとわかる。


「……おおお♪」


 可視モードに戻した。うん、やはり綺麗である。

 しかし、本当にこれを再現してしまうとは。いわゆる〝トンデモ装備〟に分類されていそうなものだが。


《仰る通り、当時は実用化に至っておりませんでした。ですがこの森は〝トンデモ装備〟の作成に適した環境が整っていると言いますか――実のところ、結界の魔道具の再現よりこちらのほうが簡単でした。魔素の運用は魔力よりもロスが生じず、シンプルなのです》


 人工魔導結晶は〝魔素を魔力に変換・蓄積・運用できる〟代物だが、魔素の直接運用も可能だった。魔導刀はアダマンタイトの内部に魔素を循環させる過程で、ある程度は魔力変換が必要だったらしい。

 この盾は魔素のみなので、魔力感知能力には引っかからないとのこと。


 分解の役目を持つ魔素が私の身体をすっぽり包み、盾は少し離れた場所で、外部から来る一定以上の〝力〟を押し返す。二段構えの防御なのだ。

 盾の一辺は五十センチメートル。これは〈フレイム〉を装備した私を中心とし、半径五メートル以内の空間ならどこにでも、どんな角度でも移動させられる。

 ちなみにこの範囲にしたのは、私にとって大概のことには即座に反応できる距離だかららしい。

 辺と辺をぴったりくっつけて蜂の巣状の盾にしたり、空間をゆっくりスライドさせたり、右の一枚を消して左に出現させたり、いろいろ試す。操作性はゲームと同じ、いや、それ以上に早いか。


 テーブルやその他の物体はすり抜ける。

 この部屋を分割している床から天井までのガラスに向かって、二枚の盾に別のイメージを与えてみた。すると指示通り、一枚は向こう側にすり抜け、一枚はガラスの表面でぴたりと止まった。ガラスだから抜けられないとか、逆にガラスを物体と認識できないとか、特にそういうことはなかった。


《操作は問題ないようですので、強度の確認をお願いします》


 強度確認て、どうすれば――と思っていると、音もなく奥の壁の一部がスライドした。

 一人分の出入口が開いたのでそこをくぐると、先ほどよりもずっと広い真四角の空間が広がっている。

 床に何個か置かれている石材らしきものは何だろうか。部屋が白く明るいので、どっしりとした灰色がやけに目立つ。


《コンクリートブロックです》


 ARK(アーク)氏の声とともに、天井近くの壁からにゅ、とロボットアームが出てきた。アームの先端は何やら筒になっており、そこから「シュン」と空気音があがった。

 と同時に、ブロックの表面に何かが「トス!」と。


「……?」


 シュシュシュシュシュ!

 トストストストストス!


「…………」


 近付いてみると、釘が刺さっていた。深々と。

 ……。

 コンクリートをこんこん。うむ、とても硬そうだ。ARK(アーク)さんが用意したのだから、多分とてもつよい。

 ところで、どうして例の筒が私を真正面に捉えているのだろうか?


《お動きにならないでください、マスター》

「待てARK(アーク)君、話せばわかる。冷静になるんだ」

《照準は外しておりますので、マスターの身体には当たりません。ご安心ください》

「あ、言われてみれば若干角度がズレてる? それなら安心……できるか! 怖いわ!」

《外しておりますが、これが〝攻撃である〟と認識しておいてください》


 認識しておいてください? ばっちりだ!

 止める間もなく空気音が連続で響いた。同時に目の前で「カカカカカンカンカンカンガキンガッ!」と何かが弾けた。

 盾一枚だけでビクともしなかった。そして人に釘を撃ってはいけないと思った。


《では次に》

「まだあんの!?」


 その後もさまざまな物でテストが行われた。ゲームでは防御力が数値化されていたけれど、当然ながら現実にはないので、何をどれだけ防げるかを私自身が把握するのはとても大事だ。わかるとも。

 最終的に、〈フレイム〉のライフルを至近距離、かつ狙撃モードで撃たれても盾二枚分で防げると判明したので、もう充分ストップとお願いした。

 鼓膜ではなく腹に響くような「ドン」とともに、髪がそより。床に散らばったコンクリートの欠片や釘が微妙にコロン。

 通常の弾薬と魔素弾の共通点やら相違点を誰かが解説していたけれど、右から左へ全抜けした。

 怖かった。


 そして次にライフルのテストである。これは跳弾の恐れがないので、そのへんのコンクリート塊を適当に撃てばいいという楽なものだった。

 いや本当に、シールドのテストより圧倒的に気が楽だった。もしやこれはARK(アーク)氏の計算ではないかとすら思えたほどだ。


 アームガードが両腕分あっても、出せるのは一丁だけ。

 いつもの胸当てを装着し、ライフルを展開。重さがないので片手で持てるが、射撃時の反動がどこまでくるかわからない。だから最初は両手でしっかり構える。

 両利きなのでどちらでもいいが、まずは右手でグリップを握り、左手を弾倉より銃身側にあるハンドガードに添える。

 やや背をまるめ、銃床を肩の付け根に当てる。胸当ての形がその部分もきっちりガードできるようになっているのは、もしや最初からこうする計画だったのではと邪推せざるを得ない。

 脇を締め、頬を銃床部分に触れさせ、狙いを定める。


 まずはフルオート。

 トリガーを引いている間は自動的に弾が撃ち出される代わりに、狙いが甘くなりやすい。長距離よりも中距離向け。

 想像以上に音は静かで、耳栓なしでも「トトトトト」ぐらいだ。ただし肩から伝わる反動はそんな可愛らしいものではない。

 銃床内部には、撃ち出す反対方向への衝撃を一部相殺する魔導式もあり、私は片手でも難なく扱えたが、この国の一般的な女性の身体能力では難しそうだ。女性騎士や討伐者でもなければ、背中から転倒するだろう。

 

 煙はなく、臭いもない。破壊の際に生じたコンクリートの粉末は、すかさずロボットアームが出てきて吸引した。

 スロー映像を見せてもらうと、魔素弾は半透明で、金色がかった白。空気中の魔素が反応し合い、弾道上で時折きらりと瞬いていた。

 コンクリートブロックがものの数秒で粉々になった。

 コレ ヤバイヤツ デス。


 次にセミオート。

 トリガーを一回引くごとに一発ずつ弾が出る。その分、じっくり狙いをつけやすい。本来は弾を温存する目的もあったのだが、残弾数無限のこれにはもう関係がない。長距離から遠距離向け――ではあるけれど、今日は至近距離のみだ。

 だいたい、理論上では一キロ先まで当てられるとしても、実際やるとなれば相当に難しい。標的との間に邪魔が入らないのを入念に確かめたのに、撃った瞬間、運悪く何かが通りかかる可能性だってある。

 だから近~中距離射程のセミオートハンドガンで良かったじゃん? と文句をつけたくなるけれど、よくよく考えればハードルが下がった分、軽々しく使ってしまいそうになるかもしれない。となると、むしろお気楽に手を出せない武器で良かったのかも……と思い直した。


 にゅ、と出てきた照準器で、数十メートル先のコンクリートブロックを覗く。この距離なら必要ないのだが、まあ練習だ。

 うつ伏せの姿勢は苦手なので、まずは床にあぐらをかき、左膝を立てる。次に左腕を曲げ、肘のあたりを膝の上へ水平になるよう置き、その腕にハンドガードを載せる。

 グリップを握り、浮かせた右腕を左手で支え、姿勢と狙いをしっかり安定させる。

 ……というか。


ARK(アーク)さんや。この姿勢について、何かご指摘はありませんこと?」

《特にありません。マスターでしたら、立った姿勢でも射撃に問題はないかと思われますが、そちらのほうがより安定しているかと》

「……とほ~」


 ARK(アーク)氏から教わってすらいないのに私、一発合格とか。ちょっとそれどうなんだろう?

 あのゲーム本当に実戦仕様だったんだな、と実感して冷や汗が出るやら悲しいやら……。

 気を取り直して、トリガーにかけた指を引く。


 ドン!


 腹の底に響くような衝撃音を感じた。耳で聴くというより、身体全体で音を感じた。

 確かに火薬の炸裂音とは違う。遥かに静かだ。

 でも、どこがどうとは巧く説明できないが――やばい。

 凝縮された魔素の弾丸は、通常の弾丸とは異なる。けれど通常の弾丸の本物を知らない私としては、これが正真正銘、本物なわけで。


「…………ははは」


 乾いた笑い声が漏れた。心なしか、口の端が引きつる。

 いくら音速超えたって、たかが小さな弾の生み出す衝撃波なんて大したことないよきっと、と甘く見ていた自分に猛烈な突っ込みを入れたい。

 風が動いたな、ぐらいの波を感じた。おそらくだが、室内で反射しているのを受けて、身体周りの魔素がその悪影響から守ってくれているのだと思う。

 でもこれは、私にぴったり密着しているならまだしも、少し離れた場所に誰かがいたらやばい。

 だって、床に散らばっていた釘やコンクリートの欠片が、綺麗に脇へ寄っている。


 ――大気中の魔素に作用する分、周りに与える力が大きくなったりしてないかこれは?


 魔素弾は標的の中央に野球ボール大の穴を穿ち、そこから放射状に無数のヒビが入っていた。

 軽く叩けば崩れそうだ。

 コンクリートブロックであれなら、もし生物だったら?


 コノブツ エイキュウフーイン スイショウ。


 試し撃ちはそこで強制終了した。何が何でも終了した。

 威力も反動の大きさもだいたいわかったしそれでいいのだ。




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