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その非常にも冷たく、冷酷な目に取り巻きはそれ以上田中に近づくことはしなかった。
取り巻きたちが、近づいてこないことを確認した後、女はまた田中の方に目を向けて話す。
「最後の一回聞くよ?あたしの、友達に何の用?」
田中にそう聞きながら田中の腕をつかむ手に力を入れるのがわかった。
でもそんなことより私は、女が私のこと友達だといったことに、感動していた。
初めていわれた。初めて友達って、言ってもらえた...。
するとそういわれた、田中がさっきまでの威勢をなくし、今度は怯えながら言った。
「べ、別に、あたしらはあいつの友達で。た、ただのいじりじゃねーかよ...」
「ふーん、そうなんだ。」
田中が、私のことを友達だといった後女は田中の上からどいた。
そして私の方を見る。
「こいつら、あんたの友達なの?」
その場にいた人の目線が一気に私に集中することが分かった。
大きな音を立てて、大きな声を出していた私たちを中心として、周りには多くの人が集まっていて、「なになに?どうした?」「え、なに?喧嘩?」などと声が飛び交っている。
そんななか、いきなり話しかけられた私は、恐怖ですぐに声が出ず、おびえているとさっきまでの明るい声に戻して、もう一度私に聞いてくる。
「ねぇ、この人たち、あんたの友達?」
分かっている。
私だってすぐに言いたい、そいつらは友達じゃない。私をいじめているグループだって。
でも、臆病で弱虫な私は声にできずに、下を向く。
まだそんなに秒数は経っていないはずなのに、こういうときだけ時間が早く感じるのはなんでなんだろう。
ずっと下を向いて、何も言えずにいる私に、女が優しく言う。
「ねぇ、いつまでそうしてるの?そんなんじゃ、ずっと変われないよ。」
そういう女の声に反応するように、恐る恐る私は女の方を向く。
そこにいたのは、さっきまでの怖い女じゃなくて、ゲームセンターで馬鹿みたいにはしゃいでいた女の顔だった。
「大丈夫だって、あたしは味方だよ?」
そう言って女は私に笑いかける。
ずっと言ってもらいたかった言葉を、女は意図も簡単に私にくれる。
バカみたいな笑顔で、バカみたいに明るく。
すると自然と私の目から涙が流れて、ずっとほしかった言葉に答えるように、口を開いていた。
「...っがう!そい、つらは友達なんかじゃない!!」
自分の中でも大きな声を出した。
笑顔でやさしくいってくるその女に聞こえるように。
私もその女同じように、バカになって叫んだ。
その私の声を聴いたとき、女は小さな声で「やれば、できるじゃん。」そういったような気がした。