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視線を上げると、そこにはいつも私をいじめている主犯格グループがいた。
「なんで...。」
今日は平日で、この時間なら学校にいるはずなのに。
なんで、この人たちはここにいるの?
そんなことを考えていると主犯格のリーダー、田中 園科が私の肩に腕を回してきた。
「おいおい~お前こんなとこでなにしてるの?」
「え、まさかだけどサボりじゃないよね!?」
「うわー、学校にへばりついているコケがサボりとか冗談でもきついって!」
私の周りで、田中とその取り巻きがあははと大きな声で笑う。
その声で、私は一気に現実に戻される。
あぁ、私はこいつらのこの声から、この香水のきついにおいから、この目から逃げたくてあそこに立っていたんだ。
こんなところで、こんなことをしてる場合じゃないのに、何しているんだろう私は。
現実に戻された私が無言でいると、田中が私のカバンに手を伸ばしながら大きな声で言う。
「わかった!あたしらに奢ってくれるためにお前ここにいるんでしょ?さすがコケ!」
「...ちがっ」
いきなり私のカバンに手をかける田中から逃れるように身を丸める。
でも、それは全然田中達には通じない逃れ方で、そんな私の両腕を取り巻きがつかんで無理やり広げようとする。
とっさに周りを見たとき、さっきまで一緒にいた女が表情を変えずにこっちを見ていた。
あぁ、この目知ってる。偽善者の目だ。
所詮あいつも、周りと同じだったんだ。
女の方を見て絶望していた私に、主犯格は手加減せず絡んでくる。
「いいって、そんないらない抵抗しなくて。」
「そうそう、だるいからぁ~」
そういいながら、私の腕を思いっきり取り巻きが引っ張ってくる。
いくら何でも、2対1だと敵わない私の腕はすぐに開かれてしまう。
「ほらほら、はやくカバンだせよ!」
「やめ...もう、やだっ」
私は両腕をつかまれて、田中にカバンを取られそうになった時、カバンを取ろうとした田中の腕をさっきの女がつかんだ。
「あ?なんだよ、離せよ!」
田中がそのまま女の手を振り払おうとすると、女はいきなり田中を押す。
いきなりの出来事で田中はそのまま地面に倒れる。が、女は田中の上から退くことをしないでそのまま田中を押し倒したような状態になった。
いきなりの出来事で、私は頭の処理が追い付かず、唖然としていた。
私の両腕をつかんでいた、取り巻き立ちもぽかんとした顔で、女と田中の方をただただ見ていた。
すると、女はさっきとまではまるで、別人のような冷たい声で田中に言う。
「...なに?こいつに、何の用?」
いきなりの問いに、田中は一瞬ひるんだが、すぐに女に言い返す。
「あ?誰だよお前!どけよ、関係ねーだろうが!」
「関係ない?だから?あたしは今、お前らに何の用か聞いてんだけど。」
「うるせぇんだよ!どけっつーの!手を放せよ!」
「あんた耳ついてんの?聞こえてる?」
「どけよ!痛えんだよ!どけ、ブス!」
田中は、頭が混乱しているのか、まるで女の質問に答えていない。
ずっと女の下でバタバタと暴れ続けている。
その姿を見た取り巻きたちが、私の手を放していそいで田中の方によると、さっきまで田中の方を見ていた女が、笑っていない目で取り巻きたちを見て、たった一言
「それ以上、こっちにくんなよ?」
といった。