2. 聖女にはイケメン二人が付き従うようです
頑張って更新します。
お待たせしました。
信じられない。だって私はさっきまで今までの人生最高の舞台にいたのだ。スポットライトを浴びて、喜びに震えていたのだ。感激と感謝の気持ちで涙を流していた。はず。確か。
茫然を立ちすくみ、そしてヘナヘナと膝から崩れ落ちた。
「ルイ様!」
咄嗟に、後ろにいたユージンさん?にガシッと支えられました。眩暈もしてきました。余りの非現実さに私の頭は全くついていけない。
「早く戻らないと・・・。優勝者がいなければセレモニーが進まないわ。皆も心配しているでしょうに。すみませんが、シューレットさん?早く戻してください。お願いします」
私は、足に力を込めて姿勢を正すと彼に頭を下げた。
「ああ。ルイ様、頭を上げて下さい。残念ですが、元の世界にお戻しすることは出来ないのです」
「戻れないの?」
「はい。とっても心苦しいのですが。こちらに来ることは可能ですが、こちらから戻るということは多分無理でしょう・・・」
「多分?なぜ?」
「前例が無いのです。異世界からいらっしゃった聖女様が、お戻りになったことは過去に一度も無いのです」
「・・・・・私、聖女じゃないです!!」
埒の開かない問答に頭がクラクラしてきました。
シューレットさん?を先頭に、足元も覚束なくなった私を支えてユージンさん?、そして大事な私のトロフィーやキャリーバッグを抱えた白ローブの数人が長い廊下を進む。
「貴方達は、ルイ様のお荷物をお部屋に運んで下さい。ルイ様、にわかに信じられなくて混乱されているのは重々承知しています。まずはきちんとお話致しましょう」
そう言うと、白ローブ達とは分かれて階段に向かった。
「ルイ様、これからは階段を少し上るので、ユージンにお任せいただけますか?」
は?お任せ?
「はあぁ・・・。」
良く分からないままに聞かれて、気の抜けた声で返事をしたとたん
「失礼します」
≪ひ、ひえっ!?≫
ユージンさん?に人生初のお姫様だっこ!?されました!!
私を抱えてもびくともしないです。素晴らしい体幹です。なんて一瞬思いましたが、階段上るのにお姫様抱っこなんてびっくりし過ぎて体が硬直しましたよ!カチコチになっている私に、ユージンさん?は遠慮がちに声を掛けてきました。
「ルイ様、申し訳ございませんが、腕を私の首に掛けて頂けると姿勢が安定します。階段を上るのでそうして頂けると安心なのですが」
それって!もろに抱き付いているようですよ!この距離の近さに、初めてはっきりと彼の顔を見ることが出来ました。黄金色の金髪に、タンザナイトのような深く濃いブルー。白く滑らかな肌に鼻梁はスッキリと高い。イケメンさんじゃないの。
どこぞのスーパーモデルも裸足で逃げていくレベルです。男性なのにこの肌質とか羨ましい!
と、つい至近距離で見つめていると、ポッと彼の頬に赤みが差しました。いかんいかん。私たっらいくら何でも失礼でしょう。慌てて、でも遠慮しながら彼の首に腕を回しました。
「それでは行きましょう。ルイ様にはご覧になって頂くのが一番良いでしょう」
シューレットさん?はそう言うと階段を先導して上って行きます。その後を私は落ち着かない気持ちでユージンさん?に運ばれました。
随分階段を上ったように思います。大きな大階段から塔の螺旋階段を上ります。
ユージンさん?は大丈夫でしょうか。いくら私がぱっと見で軽く見えそうであったとしても、エステティシャンは体力勝負なので、結構筋肉質です。それに本人が緩んでいたら信用されないので体形管理には気を付けています。つまり、結構重いと思います・・・汗っ。
そんな私の心配を気に掛けるふうでもなく、ユージンさん?は軽々と階段を上って行きます。
「ここは、エルグランド王国で、歴代聖女様がお住まいになる大神殿です。ルイ様にご覧になって頂きたいのはこちらです」
シューレットさん?がにっこりと微笑んで扉に手を掛けました。
やっと着いたようです。はあ、お疲れ様です。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
眩い自然の光が輝き溢れ、空は真っ青に雲一つなく晴れ渡っています。心地よい風が頬に触れていきます。そこは、高い塔の上にある展望台でした。大理石の神殿は太陽の光を照り返して白く輝き、大きな神殿の周囲は正確に造成された街並みがずっと先まで広っがていました。これが、エルブランド王国という国なんだ。
街並みは私がいた世界とは違い、背の高いビルも工場、大きくて騒がしい道路や車も見当たらない。そして、暫く見たことのない風景と色のコントラストに息を呑んで眺めているとシューレットさん?が静かな声で言いました。
「信じて頂けましたか?ここが貴方の世界と違うことを?」
はい。信じました。だって、青い空には月が二つ浮かんでいますもの!!
「それでは、お部屋に参りましょう」
そう言うと、彼は展望台の中央にあった円柱に手を触れる。するとその周囲に青く光る不思議な魔法陣が現れました!、シューレットさん?に続き、ユージンさん?に抱っこされたまま私は揺ら揺らとした円陣に入りました。なんと、魔法陣の下から青い光がぶわーっと吹き上がりました。
「え!?、な何?どうしたの?」
「転移魔法で、お部屋にご案内します」
なんと。この世界には魔法があります。
**********
転移魔法で、あっという間に新しいお部屋に案内された私は、それならば展望台にも転移魔法を使えばわざわざ階段を上らなくてはよかったのでは?と質問した。シューレットさん?は、転移魔法は魔法陣間でしか移動できないこと。魔法陣が無い場合はそれに替わる魔法が掛かっていないと無理であることを教えてくれた。つまり、展望台とこの部屋には転移魔法の魔法陣が記されているので、自由に移動ができるらしい。
彼とユージンさん?に囲まれて3人でお茶を飲む。この世界にも紅茶のような物があって、香りも味も変わらないように見える。飲む前は何だか分からない物を口にするのが怖くて躊躇していた。すると、シューレットさん?が歴代聖女様も普通に飲み食いできていたから大丈夫でしょうと教えてくれた。どちらにしても、今の私にはここで出された物を食べるしかないのでけれど。
紅茶で喉を潤し、漸く人心地ついた私は部屋を見廻した。女性が使うような立派な応接室。ソファもテーブルも猫足の優雅なカーブをした立派な物だ。花瓶に飾られている花もたくさんの白百合が活けられて高貴な香りを漂わせている。
美しい所作でシューレットさん?は紅茶のカップをテーブルに置くと、姿勢を正して立ち上がった。
「改めて、エルブランド王国にようこそお越しいただきました。私は、大神殿で聖女様の側近を務めさせて頂きますシューレット・パルトワと申します。これでも聖女様に関わる全ての事の責任者となります。以後お見知りおきを。そしてこちらが、聖騎士団の第一師団長であるユージンです」
シューレットさん(ようやく?が取れました)が隣に目で合図しました。
「聖女様には、知らぬこととはいえ、剣をむける失礼を冒してしまいました。大変失礼を致しました。申し訳ございませんでした。どうぞお許し下さい。私は、ユージン・コンダール。聖女様をお守りする騎士でございます」
ユージンさん(こちらも?が取れました)も姿勢を正して膝を着き、騎士の礼をとり頭を下げた。
シューレットさんもユージンさんも二人とも物凄い美人さん。いえ、イケメン振りです。目の保養ですが、見とれている訳にもいかないので私もご挨拶します。
「ルイ・タカトウです。日本という国でエステティシャンをしておりました。」
何がどうしてこうなったのか判りませんが、明らかに異世界に跳ばされてしまったからには、何とかこの世界で生きていくしかありません。聖女様なんてあり得ないし間違いかと思うけど、まずはこの世界に慣れないとダメ。とにかくここは、二人の言うことを聞いていよう。
だって、この世界の知り合いは今はこの人達だけしかいないもの。
「とにかく、よろしくお願いします」
誤字脱字はまとめて修正します。
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