過度な俺ツエーはどうかと思うけど、主人公の行動に周囲が驚く描写は必要だと思うんだ
※注意※
・このエッセイは完全に僕の主観です。
・所々上から目線に聞こえますが、このエッセイに出てくる作品には心より尊敬してます。
・ちゃんと読めばわかりますが、俺ツエーを全否定する気はありません。
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さて、昨今世間で流行しつつ非難されている俺ツエー作品。
その中で、よくある流れがこれだ。
主人公がなにか凄いことをする(例:超極大魔法で森一帯を焼き払う)。
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それを見た他の登場人物が口をあんぐり。
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主人公「どったの皆?」
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友人達「お前すごすぎだろおおおおおおおおおっ!!!」
はい、よく見るやつね。
でもね、これね、別に悪い事じゃないと思うのですよ僕は。
ただ過度に演出しているのが鼻につくだけで、主人公がなにかをやって周りが驚く描写は必要だと思う。
驚き描写を1~100で測っていこう。100に近づくほど強く、1に近づくほど描写が弱いというところだ。個人的ベストは50。上の奴は95ぐらい。
やはり読者というのは主人公に多少なりとも感情移入しているもの。主人公の行動が褒められたり、認められたり、驚かれたりするのは嬉しいと思う。逆に、主人公が凄いことをしているのに周りのリアクションをカットして、話を進めてしまうとカタルシスが半減する。
ならば、ベストな驚き描写とはどの辺りだろうか? ……まぁ、その答えを知っていれば僕は底辺作家ではないだろう。
だからここでは、僕が好きなリアクションをする作品を二つ紹介しよう。
一つ目は『ヒカルの碁』。
これは一巻から上手い! この話は簡単に言うと、超強い碁打ちが幽霊となって主人公の元に来る。そして主人公は幽霊碁打ちの言う通り碁を打つのだが……周りのリアクションが良い感じに心を打つ。リアクションに説得力があり、腑に落ちる部分が多い。
二つ目は『スラムダンク』。
この作品には僕の好きなリアクション描写のテンプレが入っている。ズバリそれは、
主人公が凄いことをする。だけどこれはわかる人にしかわからない。
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敵の実力者「誰も見てねーが、アイツすげぇぞ」
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主人公チームの監督「逸材や!」
この一つ目の“わかる人にしかわからない”、というのが私の一番の好み。簡単に言うと、一般人「アイツなにやってんだ?」からの実力者「アイツ、誰も見てないがすげーことやってるぞ」って感じのが僕の思い浮かべる最高のツエー描写。一般人、実力者で二分しているのでちょうど50ぐらい。
ここで一般人「主人公すげぇ!」敵「主人公すげぇ!」味方「主人公すげぇ!」と役満を決め込むと一気に100に達する。ただし、その過程で全員が驚くしっかりとした描写があるのならその限りではない。
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次に、周囲のリアクションとは、つまり、その世界の常識だ。
例えば主人公が人道的に異常な行動をしていたとしよう。そういう時に、
仲間「さっすが主人公だぜ!」
となったら台無しだ。
この仲間も狂人設定ならばいいが、常識人のはずのキャラがこんな反応したら見る気は失せる。ここで、
仲間(コイツ、平気で人を殺してやがる!? やべぇ奴だ……)
ってなれば、異常なのは主人公だと読者は納得し、この世界の常識もしっかりとしていることがわかる。主人公のキャラも、仲間のキャラも一気に固まるだろう。
全く同じアクションをしたとしても、その後のリアクションで天と地の差になるのだ。主人公の行動に仲間が驚いている、という点では同じなのに作品の印象はぐるりと変わる。
世に出てる名作マンガやラノベは主人公周りのリアクションが非常にうまいと思う。でもそういった描写はあまり取り上げられることはなくて、名シーンとなることはない。なんというのだろうか、僕個人からするとこういう細かい登場人物のリアクションが一番作家の技量が伺えるのです(超上から目線)。
主人公が認められる描写は必要。だから俺ツエー、って描写自体を非難するのは違う。と言いたい。
でもこのリアクションの強弱は媒体によってベストは異なる。
例えば漫画で好まれるのが40~70だとすれば、一昔前のライトノベルは60~80、なろうは80~100と言ったところだろう。
どこで、なにを書くかでリアクションの強弱を調整しなくてはならない。
誰もあまり気にしない部分だが、主人公の行動に対するリアクションというのは作品全体の面白さに関わる。これが下手だと、全部つまらない。パワーバランスも上手く伝わらない。
僕が好きな周囲が驚く描写をする作品は上記の二つだが、皆さんはどうでしょうか。皆さんの好きな作品の特に好きな俺ツエー描写はなんでしょうか。案外、俺ツエーというのは奥の深いモノなので、集中して見てみると面白いものです。