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New elemental stones / 新しい精霊石

夏と秋までに作りたいものをリストアップして、いくつかの班が組まれることになった。


 一班 新規精霊道具開発

  『温風石』『涼風石』『凍り石』を開発する

  担当:ライアン、文官、クグロフ、リン


 二班 センス製作

  担当:クグロフ、レーチェ、文官、リン


 三班 新規菓子開発

  担当:ブルダルー、館料理人、リン


 四班 デザート用の皿製作

  担当:クグロフ、ラミントン磁器担当者、文官、リン


「こんな感じで大丈夫でしょうか」


 シムネルが書き留めてくれたメモを見ながら、ライアンと話す。


「リン、班がもう一つだ。レーチェとリンで、リンの衣装班がいる」

「ん?レーチェさんにお任せなので、いらないと思いますけど」

「大きいレースをどうにかするのだろう?夏に王都へ行くのなら、衣装に使ってあれば、母上もブラマンジェ領の者も喜ぶのではないか?」


 こうして、五班ができた。

 

 五班 リンの衣装

  担当:レーチェ、リン


 春の大市の前は、今日だ、明日だと言った性急さだったため、それよりも余裕があるように思うが、決して十分な時間があるわけでもない。

 新しい菓子開発以外は、担当者が重なるので、一度に集まって済ませることになった。

 ライアンがラグナルに、新商品の予定があり、皿の注文がでる予定だとシルフを飛ばすと、今週末でいいなら、磁器の担当者を派遣してくれることになった。それだと話が早く進むし、わざわざ領主様用のシルフ飛伝の道具を使って、ラグナルを伝言係にしなくて済む。ありがたい話だ。


 そうして本日は、皆が工房に集まって、話し合いをする日である。

 なかでも精霊道具の石に関しては、リンとライアンで相談すればいいことである。

 人が集まる前に、ライアンとリンは工房に籠り、必要な祝詞についてまとめていく。


「リン、まず『温風石』はサラマンダーとシルフだが、何か特注したいことはあるか」

「ヘアドライヤーは、風の強さが『強い』『弱い』と二段階あると便利です」


 リンはドライヤーを思い浮かべながら言った。


「それだと、調整がシルフだけなので、大きな問題はないな。『そよ風』で弱く、『強風』で強くなる」


 ライアンは風の加護石を握り、『そよ風』と『強風』の風を出してみせる。


「ぶ。ライアン、これだと強すぎです。髪がぐちゃぐちゃになります」

「それでは、『凧揚げ』か『通り風』ぐらいが適当か」


 ライアンは更に二つの風を出し、リンが『凧揚げ』にうなずくと、メモを取った。


「あと、シルフの『送風』だけってできますか?」

「可能だが……。石を互いに打ち付けるというコマンドを魔法陣に入れているので、風の石がもう一つ必要になる。価格が上がるが、いいか?」

「あ、じゃあ、いらないです。後、部屋を暖めるヒーターの方は、風がこう、一か所に当たらないように、横に動くように出せると、広く温まるので、より便利です」


 リンは手を扇ぐようにして、ライアンに伝えた。


「……できるはずだ。やったことがないので、少し考える」

「『涼風石』も同じように動かしたいです。あと、これは『送風』と『涼風』の、両方が出るのが理想です」

「オンディーヌとシルフの組み合わせでやろうと思ったが、そういうことなら、風の石を二つの方がいいか。水が入ったほうが、冷え方の効率がいいのだが」


 ライアンは、指でトントンと机を叩くようにして、考えている。


「ライアン、冷室ほど寒くしないでくださいね?風が動くだけでも、暑いときには十分気持ちいいですから」

「それなら、冬というより、秋風ぐらいか。リン、これはどうだ。『雁渡し』、それから『紅葉散らし』」


 初夏なのに、背筋がすうっとする風が工房を吹き抜けた。


「なんか、綺麗な響きの祝詞ですね」

「王国初期の、戦争をしていない時の術師は、こういうので競って遊んだようだ。今なら精霊道具の質や、魔法陣の優秀さで競うが、昔は魔法陣などなかったからな」

「優雅ですねえ。この二つなら『紅葉』の方が、涼しいかもしれないですね」

「それで試してみよう」


 ライアンもリンも、実用一辺倒である。


「でも、『涼風石』の需要がありますかねえ?」

「南方の領地や国は、購入するのではないか?タブレットは新しい物が好きだから、宮殿中に配備しそうだが」


 久しぶりに王都にいくのだから、商談をして、せいぜい多く買ってもらおうではないか、とライアンは笑顔だ。


 『凍り石』で作りたいものは、いわゆる冷凍庫である。

 すでに冷室があるので、それのアレンジで可能ではないかと思う。

 

「冷室より冷たく、氷ができて、維持できる冷凍室か……」

「『極寒の風』より冷たい祝詞ができますか?」

「できる、というよりすでにあるが、不用意に使えぬ祝詞だ」


 ライアンはかなり難しい顔をして考え込んでいる。シルフの祝詞なのに、サラマンダー以上に大変な祝詞なのだろうか。


「この前みたいに、力の使い過ぎになるとか?」

「そうではない。まあ、大型になればあり得るが……。『瞬間氷結』や『氷塊』の祝詞や道具は、主に軍事用なのだ」

「軍事用?!冷凍で?」

「ああ。兵、軍馬、瞬時に凍らせることができる。大型の道具になれば、一個隊、宮殿を丸々凍結できる」


 その過激な使い方に、リンの口はポカリと開いたままだ。


「ライアン、瞬時に凍らせる必要はないというか、そんな危ないのは要らないんですけど……」

「ふむ。冷凍室に入れる肉や魚は、すでに動かぬか。それなら『氷結』の祝詞で十分だ」


 リンはコクコクとうなずいた。


「しっかり検証して、危なくないのにしましょうね?」


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