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2話 タビ、お前もか

ホーリュー王子から逃げ出したカイルとテトは村を抜ける為の吊り橋まで来ていた。

 カイルは相棒バイクであるタビを止めた。


 その理由は吊り橋がタビの重さに耐えれるか不安だったからだ。


「どうして止まったのカイル?」

「このタビの重さって意外とあってさ、吊り橋が耐えられるかって」


 テトがタビの車輪をまじまじと凝視して重さを見図る。

「確かに重そう。この吊り橋も結構古いから、正直心配かも」


「でも村を抜けるルートはここしかないんだよな?」

「ないことはないけど、かなり遠回りになるし、川も渡らなきゃならないから」


 川は正直言って渡りたくない。万が一タビのエンジンが水没したら困るからだ。


「じゃあここしかないな、悪いテト。先に渡ってくれないか?」

「え? 全然いいけど」


 テトは仰せのままに、すたこらさっさと吊り橋を一人で渡った。

 あんな身軽なテトでも、吊り橋はヒシヒシと音が鳴り、大きく横揺れしていた。


 こんな所、タビが通れるはずがない。

 でもカイルは渡るしかないのだ、タビと共に。


 決心したカイルはタビにまたがって後ろへ下がり、勢いよくエンジンをかける。


 スロットルをブンブンと2回吹かして一気に加速、そのまま吊り橋へ突っ込んだ。


 前輪はセーフ、吊り橋はまだ壊れていない。だ

が、問題は後輪が乗ったときだ。

「カイル危ない!」


 やはり吊り橋の止め金具がパキンと折れた、そこからドミノのように吊り橋の板が崩れさっていく。


 しかし時速40kmのタビは崩れさる吊り橋より速く、崩れから逃げるように突っ走る。


「よし、これなら渡りきれる!」

 と思った刹那、渡り切る手前にして出口側の止め金具が外れた、つまり行く手がない。


(嘘だろ…!? あと一歩だってのにここで終わる…!?)


 カイルは半分諦めかけて目を閉じる。


「来てシャルティナ!」

 テトは危機に応じてアドレナリンを沸かせ、シャルティナと紡いで手のひらサイズの火球を異次元から取り出す。


 それを落ちさっていくカイルの更に下に投げ込み、爆発させた。

「うぉあああ!?」


 爆風によってカイルは重力に逆らうように浮き上がり、渡りきるはずだった橋の出口へすっ飛んだ。

 なんとか命は助かった。その事にテトがふぅと安堵の息を漏らす。


「まったく、無理しちゃ危ないよ?」

「すまん、サンキュ──おい、タビは!?」


 タビの存在を思い出しては慌てて這いつくばり下の川へ目を向けた。


 助かったのはカイルだけだった。


 タビの重量を爆風で持ち上げる事が出来なかった為に、崩れさっていった橋の下でボロボロに壊れていた。


 川の流れで吊り橋の破片が流れていく中、タビだけはその場に留まり、息を止めている。


「嘘だろ……」


 絶句する。今までずっと共にしてきた家族を失ったと同じくらい悲しみがこみ上げる。


 本当に365日ずっと共にしてきたのだから、悲しいのも当然だろう。


 テトも下の川を見下ろしてタビの残骸を死体を見つめる目で見ていた。


「ごめん……あたしが何とか出来たかもしれないのに」

 テトはたかが物に対して、ここまで感情をこみ上げているカイルに同情し、唇を噛みしめる。


「いいんだ。俺がタビに無理させちゃったのが悪いんだ。俺がタビを殺しちゃったんだ……」


 テトは何も言い返せなかった。

 もう変わる事のない現実に、何を言っても変わらない事を悟っている為だ。


 そんな時、カイルが「あーっ」と気を払うように大声出し、涙を飛ばした。


「くよくよしててもしょうがない、世のため、人のために働かなきゃ! と言っても、なんの為にこの世界に来たのか知らないけどな」


 泣くのをやめ、また泣きそうな自分を忘れようと、必死に笑ってみせた。

 テトはそんなぎこちない笑顔につられ、冷めてきった心が再び暖かくなった。


「じゃあ、内の村で働きなよ! 最近は村民も減って寂しいし、じいちゃんも喜んでくれるはずだよ!」


「じいちゃん? テトのおじいちゃんが村長やってるの?」


「ううん。じいちゃんって言っても本当のじいち

ゃんじゃない。でもあたしにとっては家族同然のじいちゃんなの。村長として皆をまとめてくれてるし、あたしが子供のときはよくお世話してくれたから、勝手にじいちゃんって呼んでるんだ」


「へぇ、いい村長なんだな──って村に行く為の橋壊しちゃった……どうしよ」


「大丈夫大丈夫。皆、山で木材とってきてるからまだ帰ってこない」

「その間に橋を作ればいいんだな」

「その通り!」

 テトは可愛らしげな八重歯を見せ、カイルの背中を強めにポンと叩いた。


「さぁて、さっさと橋作っちゃいますか──! あれ?」


 ふと後ろへ振り返った時、カイルの目は瞬間冷凍したように固まった。


「ん? どしたのカイル──え?」 

 テトも同様に固まる。


──タビ、お前もか


 天地がひっくり返る程信じられないのだが、2人の目先にピンと立っていたのは、先程川から転落し、ボロボロに壊れていたタビだった。

 しかも新品同様に蘇っている。


「「どいうこと!?」」

 2人の驚いた反応に、

 タビはキラんと光って微笑んだ。


 実際、バイクであるタビが笑うことはなくとも、2人には確かに、そう見えていた。

どうも庚京次です。

今回はワンシーンのみです。

どうやらタビも残機∞なようですね笑。

それでは次回。

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