男友達
「……谷……水谷。水谷!」
先生の声が聞こえた。
「お前…補講遅れてきた上に寝るってどういう神経してんだ?」
先生が呆れた顔をしてこっちを見ている。
私は補講の間、どうやら寝てしまったようだ。
矢吹翔の噂のきっかけを考えている途中で。
「水谷は補講終わってから居残りな。」
先生はこう言い、補講を再開した。
(やばい。集中しなきゃ!)
私は気合いを入れ直し、補講に望もうとした。
そのとき、ふと思い出した。
(そう言えば、矢吹君も制服着てたような…)
周りを見渡したが彼の姿はない。
補講仲間かと勝手に思っていたがどうやら勘違いだったようだ。
(なーんだ。)
私はちょっとガッカリした自分に驚いた。
また、会って話したいと思っている自分がいるのだ。
私は中学のときからなぜか男の人が苦手で、好きな人すらろくに出来たことがなかった。
なので、男の人にまた会いたいと思う感情が自分の中にあるのだとすごく不思議に思った。
そんなことを考えていると、
「水谷、今日どうした?」
後ろの席から背中をトントンと叩いて話しかけてくる男の子がいた。
振り向くと、後ろの席には
町村洸がいた。
町村洸君は、私の唯一の男友達で、同じクラスで名簿が前後なので入学してから席も前後で仲良くなった。
町村君は、男の子苦手の私が仲良くなるレベルでコミュ力が高く、明るくて優しくて面白くて男女問わず人気がある。
バスケ部に入っていて運動神経も抜群だ。
「どうもしてないよ。なんで?」
「いや、遅刻してくるし、来たら来たで ぼーっとして授業聞いてないし。珍しいなって。」
そう言うと町村くんは続けてこう言った。
「ぼーっとしてる時の水谷の顔、やばかったぞ。こんなのだった。」
町村君は、白目をむき、口を半開きにし、体をぐでーんとした。私のマネをしているらしい。
「あははははっ!そんな顔してないし!」
私は面白くなって吹き出して笑ってしまった。
そんな私を見て、町村君も笑った。
私達はいつもこうだ。
町村君が馬鹿なことをして、私がツッコんで、2人で笑う。
こんな居心地のよい男の子は町村君が初めてだった。
そこに
「みーーずーーたーーにーー?」
先生が鬼の形相で私の横に立っていた。
「何度言えば分かるんだ?お前この中でも一番点数悪いんだぞ分かってるのか?
それとなんだ、町村も一緒に騒がしいな。お前も水谷に次いで点数悪いんだからな。」
「と、言うわけで、2人には罰として補講終わり次第、先生の雑用を手伝うこと。いいな?」
先生は早口でそう言い、また授業を再開した。
私は町村君まで巻き込んでしまって申し訳なく思い、後ろを向き町村君のほうを見ると、町村君が口パクで
が、ん、ば、ろ、う、な
と言い、笑顔になった。
私はその笑顔に救われ、前を向き、補講に集中した。
新たなキャラクターが登場しました。
町村君、私の好きなキャラクターです。
今後鍵を握ります!