03
――ウィッチになりませんか。
モルンはそう言ったんだっけ?
もしそんなことが出来るんならずっと一緒にいられるんだけど……。
ほんとにそんなこと出来るのかな、モルンは真剣な顔だから嘘じゃないとは思うけど……。
「そんなことが出来るの? その口ぶりだと嘘じゃないだろうけど……」
「大丈夫ですっ! 師匠がいなくなってからずっと魔法を練習してきたです!」
「いや練習したからって……」
「ボクは無属性です。無属性が持つ可能性を信じるです!」
「………………試したことはあるの?」
「無いですっ!」
言い切りおった!!
「無いって……」
なんか急に心配になってきたよ……。
召喚のこともそうだけど、モルンはちょっと思い込みが強いというか……いや、純粋なのかな。
まあいいや。
毒を喰らわば皿までってね。
流されてあげようじゃない。
「いいよ、わかった。ウィッチになる。で? どうすればいいの?」
「ほんとですか! 嬉しいですっ! ちょっと手を出してほしいです!」
「はい」
言われたとおり手をだしたらモルンが私の手を握ってきた――それにしても小さい手だなぁ。
あれ?
なんだか体が暖かくなってきた気がする。
それにもわんもわんしてきた……立ちくらみの時急に血が回り始めた時みたいな。
でもちょっと気持ちいいな……。
まるで春の温かい木漏れ日を浴びているような……って、なにを詩人みたいなこと言ってんの!
はずいわ!
うわ~、なんか恥ずかしくて顔が熱くなってきたよ……。
手で顔を覆いたいけど両方共モルンに握られてるし……。
放して! もう許してぇ!
このままだと手を繋いだことを照れてるみたいじゃない!
「大丈夫です……ボクもちょっと照れてるです……」
ほらぁあああああああああ!!
かんっぜんに勘違いされてるよ!
初心か! わたしゃあ初心か!!
ちっちゃい女の子の手を握っただけで照れるわけ無いでしょ!
そんなわけないでしょ!
女性経験のないおっさんじゃないんだからさあ!
人生で初めて女子と手を繋いだ中学生じゃないんだからさあ!!
…………。
うわ~ん、なんで私がこんな思いしなくちゃいけないのぉ~……。
もうやだぁ~……異世界こわぁ~い………………。
「終わったです」
…………はい、人生終了のお知らせです。
「――って、え? 終わったの? もうウィッチになったの?」
「ハイです、コンバート完了ですっ! ……ほら」
ほら、って言ったモルンが指差した方を見てみれば。
「あれ? こんな白い猫いたっけ?」
私の後ろに真っ白な猫がいた。
「エレメントですよ。お姉さんのエレメントです、光属性みたいですっ」
なんだろう…………無駄に恥ずかしがってる間に色々あったみたい。
『ワン!』
「犬かよ!」
もう一度言ってもいいでしょうか。
「犬かよぉ!!」
『ははは、冗談冗談!』
「喋れんのかい!」
なんだこの猫……。
『俺のご主人はノリがいいな!』
「ご主人?」
『はあ? そりゃそうだろ? 俺はご主人から産まれたんだからな』
「え……あー、そういえばさっきエレメンターがどうとか言ってたっけ――って、私の精霊なの!?」
いやいや。
ウィッチになることは聞いてたけれどもだけれどもされども精霊は聞いてないんだけど!
「ウィッチは例外なくエレメンターになるです」
「そういうことは先に言って!」
なんかね……ウィッチは保持してる魔力が多いから勝手に上位精霊になるんだって。
『自分の妄想で恥ずかしがってるからそうなるんだぞ』
「なんで知ってんのぉおおおおおおお!!」
私はこの白猫と上手くやっていけるのかな……。