3話 全てが急展開すぎるんですけど。1
予定日より早かったので初投稿です。
(これを一度は言ってみたかったんですよ)
突然の出来事だった。
ティオールの兵士が街の中心部で自爆して、街を半壊させたのだ。
理由は全くもって不明である。
そしてこの爆発により、とうとう民衆は蜂起した。
目的は一つ。ティオールを滅ぼすのみだ。それに向かい、街は殺気に溢れていた。
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一方、俺はというと猫耳の家でこんな事を考えていた。
「俺って全く特殊能力ないじゃん……」
完全に失念していた。この世界に転移してきた、つまりそれは何かチート能力やチート魔法を取得していてもおかしくないのだ。
少なくともラノベではそうだった。
「もしかして……」
そう考え、家の外に出て
「ファイア!」などと唱えてみる。
もちろん出ることはなかったが。
せっかく異世界に転移してきたのだから主人公っぽいチート能力が欲しいよね。主人公じゃないかもしれないけどね。
仮に自分が、異世界転移モノのラノベの主人公だとしたら、全く人気が出ないと思う。
「シグレさん、どうかしました?」
あ、嫁登場。今の聞かれていたかな。
「猫耳さん、この世界に魔法ってあるの?」
「もちろんありますよ。シグレさんの世界には無いんですか?」
「無いです」
俺は30過ぎたら魔法が使えたはずだったんだけどね。
「もしかして俺もその魔法を使えたりするの?」
「魔力が無いから無理ですよ?」
はい、俺の異世界でのチート魔法無双の話は終了。
「ちょっと待ってくれよ……そこは魔法が使えて、しかもそれがやたらと強いか、仮に弱くても何か素質を持っている所だろ……俺にも主人公補正をくれよ……」
「シグレさん、何を言っているか分からないです……」
世界とは、非情である。
前の世界では引きこもり兼不登校、挙げ句の果てに久しぶりに外出したら事故死。
そしてこの世界では魔法の使えないただの無力な人間。
そして俺は不安になり猫耳にこう言った。
「猫耳、もし俺が無力でそっちを守れるだけの力を持ってないとしても俺と結婚してくれるのか?」
前の世界で小さい頃、早雪がいじめられていた時に自分は何もできなくて歯がゆい思いをした、あの時の記憶が鮮明に甦る。もう二度とあんな思いをしたくない。
そんな思いからついつい弱音を吐いてしまう。
傷つけてしまうなら、最初から出会わない方がいい。そんな腑抜けたような考えばかりがすらすら浮かんでくる。
そんな俺を見て猫耳は悲しそうな顔をして、
「シグレさん、今から二つ選択肢をあげます。一つは魔法を使えないままだけど街に自由に行ける。もう一つは魔法を取得できる代わりに街に立ち入れなくなる。どちらがいいですか?」
と行ってきた。
「えっと…つまり守るための力を手に入れるには、俺は街に入ってはいけないという事?」
「まぁ、それに近いですね。正確には入れなくなります。」
いまいち言っている意味は分からないが、猫耳を守るためにも異世界で生きていくためにも、魔法は欲しい。
「何だ、まぁ、いまいち意味は分からないが、俺は魔法を取得する。」
「シグレさん、街に入れなくなるんですよ?それでもいいんですか?」
「あぁ、構わない。俺は猫耳を守るためにも、この世界で頑張る決意をしたんだ。嫁を守れない男がいてたまるか。」
そう言って猫耳の方を見ると猫耳は泣き出していた。
俺が慌てていると
「あ、あのですねっ、ひぐっ、シグレさんっ、私は魔法の発動のさせ方が人と違っていたせいでっ、ひぐっ、街から追い出されてしまったんです。だからっ、絶対に捨てないでください!」と言われた。
「あぁ、もちろんだ!嫁を捨てるやつなどいないさ!一生猫耳を守り続けよう!」
そう言って猫耳の頭をなでる。頭ポンポンはご法度だが、今は大丈夫だろう。
結局その日は猫耳は泣き止まず、魔法を覚えることはできなかった。
本人は
「明日、必ずそれの儀式をやりますので許してください!」
何でもするとは言わずそう言っていた。
「言ってくれてたらなぁ……」
とつぶやき、俺もその日は就寝した。
次話投稿予定日→7/27