勢いで戦争始めちゃったんですけど。 3
検査の結果、大事に至っていなかったので初投稿です。
それではどうぞ。
投コメ○○兄貴と自称初投稿兄貴を両立させたい
樹竜神は出発する前に家に向かって何かをしていた。端から見ると片手を上げているだけなのだが、その認識はあっさりと覆された。
「せいっ!」
そう樹竜神が言うと家の周囲から氷の分厚い壁が生えてくる。これだけでもかなり凄い。恐らくこれほどの魔法を使えるのはほぼいないだろう。だが、
「えーっと……これでは寒いか……何かバリアのようなものがあればな……」と樹竜神は不満げである。正直言って生きている世界が違う。
そう思っていると
「……本当におかしいですね」と子供が歩いてくる。
「あれキール?出てきたらダメだと言ったはずだぞ?あ、寒かったか?」
「いや、寒いのは事実ですが……あれだけの氷の壁を作り出したり、森を凍らせても魔力が枯渇しないあたり、やっぱり竜神はすごいなぁと思いました」
「あぁ、確かに使いすぎて魔力が20億を切っていた」
「そもそも魔力が21億もある時点でおかしいんですよ……所でこの人は?」
「あぁ、こいつはレンドだ。キールを捕まえに来たらしいぞ」
そう言って樹竜神は笑う。明らかに俺に対して
「やれるものならやってみろ」と語っている気がする。完全に樹竜神の掌の上で踊らされているのがよく分かって辛い。
一方キールは
「捕まえ……シグレさん!助けてください!」と樹竜神の後ろに隠れている。
「シグレさん、家の防衛の事は大丈夫ですよ。あとキールさんは気を付けてくださいね!」と少女に諭され、樹竜神はやっと作業を終えた。
どうやらいない間に家に攻め込まれないように仕掛けをするつもりだったらしい。
「さて、待たせてすまなかったな。それでは国王の所に行こうか」と言い、樹竜神はあっさりと竜の姿に戻った樹竜に乗る。
「本来、この状態は常人なら威圧されて身動きすらできないはずなのじゃがな……まぁといっても魔力量ならシグレの方が上じゃからな……」と樹竜も呆れたように喋っている。
「おい、レンド、どうした?」
「……足がすくんで動けません」
兵士として全く情けない話かもしれないが、樹竜を前にした緊張感は戦争のそれを凌駕していた。
「仕方ないな……ほら、肩を貸してやるから乗ってくれ」
ヨロヨロしながら樹竜の背に乗る。意外にも掴まりやすい所が結構あり、掴まるのは比較的楽だった。
「さぁ、2人とも乗ったかの?では出発するぞ!」
そう言って樹竜は大きく羽ばたいた。
−−−−−−−−−−
「……でヴェル、ティオールまであと何分くらいかかりそうだ?」
「10分ほどじゃ、落ちるでないぞ?」
この2人は普通に喋っているが俺はそれどころではない。というのも現在俺たちは猛スピードで上空を飛んでいるため、怖いのである。
「なぁヴェル、宙返りとかできるのか?」
「もちろんじゃ、それっ!」
樹竜が宙返りを決める。身体にすごい風圧が来て振り落とされそうになる。
「頼むから!止めてくれ!」
大空に俺の叫びがこだましていた。
−−−−−−−−−−
恐怖の空の旅からやっと解放された。樹竜神が宙返りをリクエストした時は一瞬殺意が沸いたのは内緒である。
そして今、俺達はティオールの近くを歩いていた。樹竜も人間の姿になり歩いている。
「あれがティオールか、周りは全て壁で覆われているのか?」と樹竜神が聞いてくる。
「はい。基本的にはどの国もこんな感じに壁に囲まれた造りらしいです」
そう教えると
「ふーん……門を閉めて水を流し込んだら面白そうだな」と物騒にも程があることを言っていた。
「……シグレはティオールをどうやって陥落させるつもりなのじゃ?」
樹竜も樹竜で物騒な話である。
「あぁ、普通に戦っても面白くなさそうだから、何か斜め上の方法を使って落とそうかなとは思っているぞ。あと戦闘員も非戦闘員も全員生かす方針で行こうと思う。殺生とかは苦手だしな」と樹竜神は宣言する。平和主義なのか物騒なのか分からない。
「あっ、でも国王は殺すかも」
「……シグレ、お主は観光気分で国家元首を殺すつもりか?」
俺は樹竜神がそれを実行できる恐ろしい存在であることを知っているのであまり笑えなかった。
そうしてティオールの入口に着いた。
「ん?レンド、帰ってきたのか!その横のヒョロいのは誰だ?」
そう関所の兵が言ってくる。その横のヒョロいのが樹竜神だと知ったらどんな顔するだろうな。
「こんにちは。レンドさんの旧友のシグルドです、こちらは妹のヴェルです」と樹竜神は無難に挨拶をしていた。
「して、入国の目的は?」
「はい、ロリコンの国王を叩きのめしに来ました」
油断している俺を尻目に笑顔で樹竜神はそう答えるのであった。
〜次回予告(大嘘)〜
恐怖の空の旅から帰還したレンドは不幸にも黒塗りの高級車に衝突(ry




