私、考えます。
なんてラッキーなんだ…。
今私は宮田くんと一緒に帰っている!
小動物みたいにふわふわな髪の毛が可愛い。萌え禿げそう。
でも直視はできない。眩しい。
なぜ今こんなことになっているのか、原因はあの北川大地と離れた数分後の出来事だった。
私はあいつが去ってからもしばらく動けずにいた。
しばらくしてなんとか落ち着くことができたが、帰ろうという気は起こらなかった。
その時、廊下からしゅたたたたという小さな足音が聞こえてきた。
それは段々近づいてくる。
止まった、と思う瞬間教室に誰かが勢いよく入ってきた。
「宮田、くん。」
先ほどまでの光景が思い出される。
だが私に見られたなどと知らない彼は今朝と同じ笑顔を保っていた。
「あ、よかったまだ人がいた!」
「?」
「実はボク、こっちの学校にくるために一人暮らしを始めたんです。だからこのあたりのことよく知らなくて。」
「う、うん。」
それと私がいたことになんの関係が?
「それで、あの。よければ、僕と一緒に帰ってくれませんか?」
「え!?」
そ、そんな急にチャンス到来!?
「あ、やっぱり嫌ですよね、じゃあーー」
「う、ううん、一緒に帰ろう!」
ここで逃してなるものか!
おお、神よ。
私にこのような幸運を恵んでくださり、ありがとうございます!
というわけで現在に至る。
永遠に続いて欲しい一本道を二人で歩く。
「み、宮田くんはさ。家事とか全部一人でしてるの?」
「はい、それはもちろん!料理はまだちょっと自信ないですけどね。」
この歳で家事もできるなんて、なんて有能なんだ。
私なんて料理どころか洗濯もしたことないのに。
「そうなんだ、すごいね。」
「えへへ、ありがとうございます!」
くしゃっとした笑顔が私の心を突き刺す。
ああ、眩しい。頭わしゃわしゃしたい。
「そういえば、同い年だからタメ口でいいんだよ?」
むしろそっちの方が…げふん。
「いやー、ボク誰にでもこうなんですよ、気にしないでください。」
「そっか、わかったよ。」
それもそれで美味しいよね。
(そういえば私、いろいろあったのにやけに冷静だな…。)
一目惚れの相手に彼氏がいることをしって、その相手と一緒に帰ってて。
どきどきはしてる。
でも。
あの時みたいな浮遊感はない。
(やっぱ男の子相手だから?)
当社比かなり静かな心臓にそう問いかけるも、返事はない。
(まあ考えても仕方ないか。)
「あ、ボクの家ここです!」
「おお。」
古びた「ザ・アパート」の前で立ち止まる。
彼はくしゃっとした笑顔をこちらに向けた。
「今日はありがとうございました!」
「いえいえ。」
「では!」
そういうと、こちらを振り返ることなく彼はアパートに駆け込んでいった。
一緒に帰れて嬉しかった。
(でも、もし私が北川大地だったら、すこしは振り向いてくれてた?)
一瞬よぎったその思考を打ち消すように、私は慌ててその場を立ち去った。