Vol. 9 「変な奴」‐4
僕,高野,滝谷の3人はD組の残りの生徒を揺らし,滝谷以外の生徒の反応が無い事を確認した。その瞬間滝谷は頭をがっくりと落とした。
「まぁそんなにがっかりするなよ。まだ俺達がいるだろ?」
僕は滝谷を元気付けようとした。
「………」
しかし滝谷のショックは相当強かったのだろう。完全に参っている。
「……とりあえずさ,他のクラスにも行ってみようよ,滝谷君」
高野も援護する。
「……分かった。ねぎポン,どこに行く?」
滝谷がわずかではあるが気を取り直した。
「とりあえずE組からH組までの教室は全部チェックしたんだ。で,今回のD組だろ?残るはA,B,Cの3クラスだけだ」
「じゃあC組に行ってみよう」
滝谷の一声に僕と高野は賛成した。3人はC組へと向かった。
しかしC組にもその次に向かったB組にも,反応のある生徒は誰一人いなかった。
「はぁ〜あ。皆駄目だったね?」
僕は一つ溜め息を吐き,滝谷に言った。
「あぁ」
「疲れたぁ」
高野の言う通り,3人はこれまでに100人を超える生徒にショックを与えてきた。しかし誰一人として反応をする者はいなかった。
「ていうか先生どこに行っちゃったんだろう?さっきから全然見掛けないんだけど」
「そんな事どうだっていいじゃん」
高野は何かを追い払うかのように言った。高野は先生のいない事については別に何も考えていないようだ。
「うん……。そうかなぁ〜?」
「A組,誰かいるかな?」
高野が言った。高野と滝谷はあまりの収穫の無さに半ば諦めを感じ始めているようだ。2人はB組の教室の床に座り込み,僕はその近くで立っている。
「まぁ一応行ってみようよ。駄目でもともとだから」
「ねぎポンがそこまで言うなら……」
滝谷はゆっくりと立ち上がった。
「高野君も行こうよ」 滝谷の誘いに釣られるようにして,高野ものったりと面倒臭そうに立ち上がった。そして3人はA組へと向かった。
A組。ここには小・中を共にした今津と部活の同じ長田,それに夏休みに行われた補習で知り合いになった野崎広がいる。果たしてこのクラスに“生存者”はいるのだろうか?期待と不安が頭の中で入り混じる。僕を先頭に3人が教室に入って行った。
「誰かいませんかぁ?」 僕は小声で言った。