Vol. 8 「変な奴」‐3
「……という事は,滝谷君のD組も初めっからこういう風になってたって事になるよね?」
僕は滝谷に訊ねてみた。
「………」
滝谷は黙ってしまった。
「どうなの滝谷君?それとももしかして何か凄い事でも起こったとか?」
「……実は俺,少し遅刻して来ちゃったんだよ。だから何も知らないんだ。ごめん」
「マジで?……でも何でそんな事今まで黙ってたん?」
「教室に入ったら先生がいなかったから『遅刻じゃない』って思ってたんだ。でもいつまで待っても先生が来ないからここの友達と話をしようとしたんだ。そしたら向こうは何の反応も見せないんだよ」
「えっ?久保田先生来なかったの?あの人D組の担任でしょ?」
「久保田先生」
こと久保田町子はD組の担任で音楽の授業を担当している先生だ。僕もよく音楽の授業でお世話になっている。
「出張だったんじゃない?あの先生よく出張するから」
「う〜ん……。でもだとしたら副担任がいるじゃんか」
「あぁそっかぁ……。他クラスは普通にやってるのに。何で……」
「そんな事無いよ。だってここにいる高野君はE組の生徒だもん」
僕はうつむく滝谷に高野を紹介した。滝谷と高野にはどこか似ている所があるようで,2人はすぐに意気投合した。
「……で,滝谷君は俺達がここに来る前に何か怪しい人かなんかを見なかったかな?」
僕は滝谷に沢辺から聞いた
「変な奴」
の話をした。
「う〜ん……。ごめん。見てない」
「そっかぁ。滝谷君でも駄目かぁ……」
「ホントごめん。力になれなくて」
「いいっていいって。遅刻した滝谷君なら知ってるんじゃないかって思ってただけだから」
「……それ,思いっ切りストレートに言ってない?」
「あ゛っ……」
高野のさりげないツッコミに僕は
「しまった!」
と思った。しかし滝谷は笑っている。僕はほっと胸を撫で下ろした。
「滝谷君は他に誰か知ってる人いないの?」
「……いない。皆このクラスだから」
滝谷は少し考えて言った。仲間は思うように増えていかない。