Vol. 7 「変な奴」‐2
僕と高野はまずE組の東隣のD組に入った。ここには小・中と学校を共にした滝谷がいる。
E組の時と同様に教室に入る。無論教室内は静まり返っている。試しに右隅にいる生徒の体を思いっ切り揺らしてみた。普通なら何らかの抵抗があるはずだ。しかし反応は全く無い。
「こうなったら片っ端からやってくしか無いな」
僕と高野は教室にいる全ての生徒に強い振動を与えていった。しかし反応は全く見られない。滝谷の番になり,ぼくは滝谷の肩に手を掛けた。その瞬間,
「あ,ねぎポンじゃん」
滝谷が目を覚ました。僕は正直8割方諦めた気持ちでいた。しかしそれはとても愚かな事だった。僕は自分を責めた。
「滝谷君は今まで何やってたん?」
気を取り直して僕が訊ねると,
「ずーっとぼーっとしてた」
「え゛ッ?!」
僕が予期せぬ滝谷の言葉に唖然としていると,高野が
「どうしたの?」
と言ってやって来た。
「いや,ここにいる滝谷君っていう同じ中学の人がね,今までずーっとぼーっとしてたって言うんだよ」
「え〜っ?」
しかし高野はあまり驚いた様子を見せない。
「あれ?何か思ったより驚いてないね」
「あぁ。俺も携帯やってたから」
確かに。僕がE組に入った時,高野は携帯で暇を潰していた。抑えきれない思いを携帯にぶつけていたのだろう。僕には絶対にできない事だが……。
「で,ここで一体何があったの?」
それを言った瞬間僕ははっとした。この事は高野にも訊ねていなかったのだ。滝谷は答える。
「俺が教室入った時はもうこんな感じだった」
「あぁ〜。俺もそうだった。高野君は?」
「……俺もかな。でも俺が入った時はこんなに静かじゃなかったよ?」
「うん。実際F組,G組は普通に騒いでたし」
なぜなのだろう?確かに僕が教室に向かう途中,周囲は騒がしかった。高野もそう言っている。しかし滝谷は違った。彼は
「入った時からこうだった」
と言っていた。
――おかしい。おかしいぞ?――
僕は滝谷に疑念を抱いた。