Vol. 6 「変な奴」‐1
他クラスも同じだった。生徒が動けず移動は無し。その為移動先の先生がわざわざ教室まで来て何の反応も無い生徒に向かって延々と説教をしている虚しいクラスもあった。
E組。この教室に高野はいる。教室内はやはり静かだった。このクラスも多分やられたのだろう。詳しい事はまだ判らないが……。僕はドアのガラス越しに教室内をこっそりと覗いてみる。どうやらここも先生が出て行ってしまったようだ。僕は教室に入って高野を探す。
E組には高野の他に名倉亜紀という僕の部の活動に協力をしてくれたとても有り難い生徒がいる。といってもいつもはたまに部室に入ってきて他の部員と雑談をしている位のごくありふれた生徒。なので顔は全くと言っていい程覚えていない。
室内を見回していると高野が携帯で暇を潰している姿にぶち当たった。高野はしばらくの間視線を携帯のディスプレイに向けていたが,僕の姿を確認すると,携帯を折り畳んで深刻そうな顔をした。
「全く授業が潰れてやる気が失せちゃったよ」
「………」
僕は軽く冗談を言ったつもりだったが,高野の心の傷は僕の予想を遥かに超えていた。彼もこの異変に対して相当量のショックを受けていたのに違いない。しかし現実はしっかりと受け止めなければならない。
「……F組,G組も全滅だった……」
僕はさりげなく言おうとしたのだが,動揺して声が震えてしまった。
「……うん……」
重苦しく気まずい空気が辺りを包んでいる。
――ヤバい。何とかしてこの場を盛り上げなくっちゃ――
「……AからDも同じだった……」
沈黙。
「……でもさ,もしかしたら皆,そういうフリをしているかもしれないよ?沢辺さんも何か『変な奴が……』って言ってたし」
「……そうかな?」
「そうだよ!」
「う〜ん……」
「………?」
「……じゃあ,他のクラス,行ってみる?」
「あぁ!!」
僕と高野は他クラスの教室に行く事にした。
――誰かいるかなあ?――
僕は内心不安だった。