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Vol.47 終局‐9

 教室に到着すると,皆がのっそりとではあるが続々と起き上がって来ていた。僕は起きたばかりで放心状態の坂橋に,これまでの僕達の活躍を一部始終語り続けた。しかし坂橋は信じない。しかもおかしな事に坂橋は

「今まで普通に授業を受けていた」

と言うのだ。

 ――記憶が書き替えられてる!それもさっきの15分間で!――

 僕は直感した。

恐らくあの経文の副作用としてこのような記憶違いの症状が現れてしまうのだろう。だとすると物凄く悲しい。僕は抵抗を感じながらも西原,畑部,春川の3人を無理矢理起こし,廊下へ連れて行って記憶が書き替えられているかどうかをテストしてみた。あの強い記憶は書き替えられなかったのだろう。あいまいな所こそあるものの,3人共記憶を残してはいた。

「そんなのってありかよ……」

 西原が悔しがる。

「ねぇ,そういえばウコンはどうしたの?」

 春川が言った。その瞬間,僕の心は懐かしさに包まれた。

「あッ……!!ていうかウコンって結局誰だったの?」

 それは僕の素朴な疑問だった。

「それよりも西崎が何だって話だよ。あんな機械?持ってるなんて凄いし」

 西原が重ねる。僕の疑問は一瞬にして打ち消されてしまった。

「うん……。ちょっと俺職員室行って来る」

 しかし,職員室に西崎の姿は無かった。駐車場に駐めてあった西崎の愛車も消えている。僕は仕方無く引き返し,その事を廊下にいる3人に伝えた。

「くっそぉ〜,逃げられたぁ〜」

 僕はとても悔しかった。これでは今日起こった事が帳消しとなってしまう。そう思うと,僕の全身から全ての気力と体力と何かがガラガラと音を立てて落石雪崩のように崩落し,目の前360度が一気に真っ白になった。

 それから数分後,河西が目を覚まし,僕は正気を取り戻した。

 ――畜生!!――

 僕達は所定の座席に着いた。今日の記憶は学校規模で完全に書き替えられてしまったようだ。

 その後西崎の消息を知る者は,誰もいない……。


 あれから既に9ヶ月が経つ。

今年もまたあの暑い季節がやって来た。

僕は今日もいつも通り何の変哲の無い授業を何の変哲も無く受けている。周囲には身を机に委ねている生徒が何人かいるが,教壇の教師はそれに構わずただ朗々と声を張り上げ,黒板に文字を書き続ける。生徒の静寂。僕はそれを感じ取った時,ふとあの日の光景を思い出す。魂の抜かれたあの教室の,あの蒼白に満ちたすさまじい程の光景を。

 今日も暑くなりそうだ……。


 記念すべき第1作目。約3ヶ月間の執筆にひとまずピリオドが打たれました。どうでしたか?ここまで読んで下さっている愛読者の方々,本当に感謝感激です。全47Vol.!!まさかここまで続くとは当初作る側の僕も全く予想していませんでした。スランプに陥った事もありました。しかし何とかそれを乗り越え,今回の「あとがき」へと到達する事ができました。これも一重に愛読者の皆様のお陰です。このような雑文を読んでいただき,本当にありがとうございました!!

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