Vol.43 終局‐5
「………」
畑部は何も言わなかった。魂達が職員室を出て行く。その時なぜか僕は魂達の後をついて行きたいという軽い衝動に駆られた。
――上がってみようかなぁ〜。4階へ――
僕がそう思っていると,長田が突然立ち上がってこう言った。
「……ポン,4階,一緒に行ってみない?」
決定打だった。僕はそれにさりげなく賛成,2人はあっという間に階段を上り切ってしまった。
僕と長田が教室に到着した時,魂達は教室の窓側に集まって話し合いをしていた。
「ん?皆何やってんの?」
僕は魂達へ訊ねた。
「お,ねぎまこ!いい所に来てくれた。今どうやったら体に入れるか,実験してたんだよ」
西原が困ったように答えた。
「あぁなるほどね!……で,一応何か試してみたりはしたの?」
「やってみたけどダメだった」
「全部?」
「全部」
西原は僕の問いに対してさらりと答えてくれる。その口調に,どこかさわやかさが感じられた。
「長田さん,どうすればいいと思う?」
僕は“その道のプロ”である長田に訊ねてみた。
「それは多分こうするんじゃないかな?」
そう言うと,長田は春川をコンパクトにし,春川の体の口を開けるとそれを口の中へ押し込んだ。すると何とまるで眠りから覚めるかのように体が起き上がったではないか!
「やったぁ〜!大成功!」
僕は純粋に喜んだ。長田はその他の魂にも同様に術を施して行く。しかし長田にとって異性となる西原には僕が施した。幸いどの体にも腐敗は進んでおらず,僕達はほっと胸を撫で下ろした。
「じゃ,早く職員室へ戻ろうよ。高野君と滝谷君が待ってるから」
「そうだね」
春川が答えた。畑部は実体となって重さを余計に感じるようになった事に違和感を抱いているようだった。
職員室へ戻るとすぐさま会議が始まった。
「どうする?」
議事進行役の畑部,皆に意見を求める。
「織部先生は今どこにいるんだろう?」
僕はふとそう思った。
「あッ,私織部先生の番号知ってるよ?」
「マジで?!」
春川の突然の発言に,僕は不意を突かれた。
「かけてみる?」
「……うん……」
僕は少し考えてからうなずいた。春川が携帯で織部を呼び出す。