Vol.42 終局‐4
「はぁ〜……。ったくこんな大事な時だっつうのに何皆くつろいでんだよ……」
僕はその光景を見て気が重くなった。ゆったりとくつろぎたい気持ちはよく解る。正直寝てしまいたい位だろう。僕は午前中に一度寝てしまったのでそれ程疲労は蓄まっていないが,最初から行動を共にしている高野や滝谷にとってはかなりの負担となっているに違いない。
――ま,皆には色々と頑張ってくれたし,今そんな急ぐような時でも無いからな――
僕はそう自分に言い聞かせ,
「一刻も早く!」
とはやる気持ちを抑え付けた。
5分後。
「……ってこんな事してる場合じゃないんじゃないの?!」
畑部だ。その突然の雷に跳ね上がる皆。畑部の言う事言う事あらゆる所に刺がある。その威力,魂となれども一向に衰えず。この“刺”に僕が何度傷つけられた事か……。畑部は今後へ向けての新たなる策を僕に募った。
「ねぇポン,これからどうするの?」
「う〜ん……」
沈黙。
「………!じゃぁとりあえず,魂になってる人は実体になってまた戻って来てくんないか?」
この僕の提案に対し,魂側からはかなりのブーイングが。しかし僕は諦めなかった。
「いいのかよ。本当にそのままで。もしかしたら今頃皆の体,腐り始めてるんかもしんないんだぞ?この暑さと朝からの時間を考えれば,今が一刻を争う,大げさに言えば生きるか死ぬかの境目なんかもしんないって事だって,皆解るはずだろ?……俺はあんまそういう『魂』だとか『心霊現象』みたいなのは詳しくねぇから実際何とも言えないけど,でもある意味生物学的に考えれば,腐ってるって可能性だって決して無いとは言い切れねぇんだぞ?だから早く行って,1人でも多く人を助けないと!」
今僕が言った事は,実際には起こり得ない事なのかもしれない。長田が何か言いたそうに口をもごもごとさせていたが,僕はそれに全く気が付かなかった。
「だったらもっと早く言ってよ!」
“刺”がまた1本,僕の胸に突き刺さった。
「畑部さん……」
西原の声掛け虚しく,畑部はいまだ目を三角にして怒っている。
「君子,行こ!」
春川が畑部を促した。