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Vol.41 終局‐3

 校舎内へは別々の組が別々の入口を使って入って行く。

「暑い〜」

 まず片方の組・“生徒組”は暑さによろよろとなりながらも昇降口を通った。靴を脱ぎ,上履きに履き替える。畑部が

「早く職員室に行こうよ」

と言ったので,その言葉に従って校舎の西階段を上って行く。涼を目前とした女子達の足取りには,戦いの疲れ等が微塵も感じられない。僕は1つ深い溜め息を吐いた。

 その一方で,もう片方の組・織部と西崎の“大人組”は2階東側の玄関を通り抜けてひっそりとした廊下を歩いていた。今回の一連の事件について,例え警察に本当の事を話したとしても,警察は絶対に信じてはくれないだろう。それどころか“精神異常者”としてのレッテルを貼られてしまう。織部は西崎と並列になって歩きながらふとそう思った。

「おい,お前ここの人間をどこへやった?」

 しかし今はこの場の状況回復が先。織部は西崎を脅し,先生方や生徒の魂の居場所を吐かせようと試みた。

「……5階の視聴覚室って所へ行って下さい。皆そこにいますから……」

 西崎が言った。弱々しい,トーンの低い声。肉体的にも精神的にもかなり参ってしまっている状態が妨げ無く脳内へと伝わって来る。

「そうか。迂闊(うかつ)だった……」

 5階はまさに死角だった。実際僕達も今回の捜索中に5階へは行っていない。が,ここで織部の頭上にとある疑問が浮上する。

「お前,そんな事よく知ってるな〜」

「一応ここのOBですから」

 西崎は即答した。しかしその言葉に“羽生南高校出身!”といった誇りの気持ちが一切感じられない。織部は視聴覚室へ向かうと同時に西崎の過去についても少しずつ掘り下げてみようと思った。

 その頃生徒達は職員室前にいた。

「入ってみる?」

 職員室前一番乗りの畑部が訊ねる。

「いいんじゃない?」

 西原。

「解った。じゃぁ開けるよ?」

 この畑部のいつに無く慎重な面持ちに,一体どのような意味が込められているのだろうか?僕にはそれが全く理解できなかった。

 ガチャッという音を立てて,押し戸式のドアは開いた。室内は冷房が点けっ放し。しかも人間は依然として生徒達以外誰もいない。それを良い事に,畑部を始めとする女子達が一斉に涼み出した。

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