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Vol.39 終局‐1

「じゃあまた学校に戻っちゃうんですか?」

 畑部が織部に訊ねる。

「そうなるな」

 織部は答えた。沈黙が流れて行く。

「……ところで,あなたの目的って一体何なんですか?」

 頃合いを見計らい,僕はどうしても訊ねておきたかったこの事について,西崎へぶつけてみた。すると西崎は腹ばいの状態からガバッと起き上がり,あぐらの姿勢となって派手に驚いた。

「はあ?お前知らないのか?」

 西崎にとって,この答えはかなり意外だったのだろう。西崎の上半身がのけ反っている。

「はい。だって僕,全く身に覚えが無いんです」

 記憶の糸を一本一本と丁寧にたどって行ってみても,それらしき節は全く見当たらない。

「……教えてやろうか?」

 西崎はもったいぶった様子で僕ににやっとした嫌な笑みを浮かべた。

「えぇ,お願いします……」

 僕はその笑みに対して胸がムカついたが,その気持ちを何とか自分で押し殺し,表情が引きつり,唇を震わせながらもきっちりと西崎の問いに応答した。

「覚えてないか?あれは確か去年だったかな。皿洗いやってた頃だから。家でちょっと一悶着あってな,しばらくの間親戚のいる京都で居候する事になっちまったんだ……」

「うんうん」

 西崎の話に皆も食い付いて来ている。予想外の展開に驚いた西崎は,姿勢を正し,言葉遣いを改めて,さらに話を続けた。

「で,その親戚の家が旅館をやってたんですよ。またこれがすんごく小せぇ旅館なんですけど。まぁ小さいとはいえ,名目上は旅館なんですから,あちこちをきれいにしておくのは当然じゃないですか。だから一応お礼にって事で,部屋をきれいにしたり色々してたんです。そしたら急に呼び出しがかかったんだ!『団体のお客様がいらっしゃったから,夕飯のお料理を作ってくれ』ってな!俺はそん時,マジで飛び上がっちまうんじゃねぇかって位嬉しかった。居候で下働きばっかりの俺に,夕飯調理のオファーが舞い上がって来たんだから」

「………?ちょっと待って下さい。その話,今回の件とどう関係があるんですか?」

 僕は延々と身の上話を続ける西崎に,待ったをかけた。

「誠,人の話をよ〜く聴け」

 それに対し,織部が優しくなだめるように,且つ有無を言わせぬ厳しい口調で制する。

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