Vol.36 決戦‐4
「おぉぉりゃぁ〜!!」
西崎は僕へ向かって突進する。僕はそれをさっとかわした。
「あれを食らうとどうなっちゃうの?」
僕は長田に訊ねた。
「魂が引っこ抜かれちゃう」
「……マジで?」
「うん。マジで」
「う〜わ……」
2人との会話が続いているその間も,西崎はひるまずUターン。再び突っ込んで来た。しかしそれも呆気無くかわされ西崎の息は切れ切れに。西崎のその間抜けっぷりに,僕達の戦意は確実に下がって行った。
「……何やってんだ?コイツ」
滝谷が吐き捨てた。すると,西崎は滝谷を横目でにらみ付けると衰弱し切った体をよろよろとさせながら再び愛車の許へ。今度は何と掃除機を出して来た。
「……さっきまではこの『ぺったん君』を使っていたが,これでは全く意味が無かった!今度はこいつで勝負だ!根岸!」
西崎は拡声器を使って一気に言うと,真っ先に崩折れてしまった。これでは戦いも締まらない。
「……ったく……」
西原は小さく放った。西崎は体力を蓄積しているようだ。
――でも掃除機ってコンセントが無いと動けねんじゃねぇのか?――
僕は掃除機の致命的な欠点に気が付いてしまった。僕は皆にその事を話してみる。
「……そうだよねぇ。なるほど!っていうかあれ学校で使えばよかったのに……」
春川がそう言って吹き出した。西崎は怒りたいのを必死でこらえている。
「よっしゃ〜!!体力回復!」
西崎は勢い良く立ち上がった。活力が先程の何倍もみなぎっている。
「そうそう!そうで無くっちゃ試合は面白くねぇよ!」
西原も余裕の構えだ。
――凄いよ西原君。幾ら相手があぁだとはいえ,一応体力は消耗しているはずなのに――
僕は西原のスタミナ力に驚異を抱いた。
「来い!西崎!」
「言われなくても行ってやらぁ〜!」
西崎は掃除機のスイッチを入れた。掃除機が音を立てて動き出す。
「……ねぎまこ,掃除機全然動いてるんだけど……」
「……あれ?」
「それって充電式なんじゃないか?」
「あぁ〜!」
織部の一言に西原と僕は納得した。
「……って今それ所じゃねぇじゃん!」
僕はツッコんだ。