Vol.33 決戦‐1
「……何か地味な名前だよね……」
女子達がひそひそ話をしている。
「うるさいうるさいうるさ〜い!!俺の名前にケチを付けるな〜!」
それを聞いた西崎は持っていた拡声器を地面に叩き付け,憤慨した。
――何だコイツ?ある意味普通じゃねぇぞ?――
僕は思った。
「おいッ,西崎!!皆を返せ!」
西原の調子には怒りがこもっている。このぶつかり合いはまだまだ続きそうだ。
「それはできないね」
「なぜだ?!」
「俺は別にこの高校に恨みがある訳じゃぁない」
「だったらどうしてそんな事するんですか!?」
畑部も強い口調で言う。
「そんな事どうだっていいだろ?!」
西崎が逆ギレした。全く話が噛み合っていない。
「畜生!!何なんだよコイツ!?」
西原の怒りも頂点に差し掛かっていた。それは僕の周囲にいるほとんどの人達に言える事だった。しかし,この2人だけは違っていた……。
「そこだ!」
「やった〜!完全制覇!!滝谷君,ありがとう!」
高野と滝谷はそんな事とはお構い無しに,何と道端にへたり込んで携帯のゲームをしていたのだ。無論,怒られるのは必至。
「そこッ!何をやってるの!?」
早速畑部に怒られた。その後雨あられのように2人に降り掛かる怒号。織部はプレイヤーの高野とアドバイザーの滝谷の携帯を揃って没収した。
「……じゃぁお前の目的は何なんだよ?!」
気を取り直して西原が訊ねる。
「俺の目的はな,……根岸誠!!お前を倒す事だ!」
「……は?」
西崎に指を差され,僕は一瞬強烈な衝撃を受けたような気がした。僕は西崎の言葉に心当たりのある出来事を思い出そうとした。しかしそれに該当するものは無く,なぜ西崎が僕を倒そうと思っているのかが全く理解できなかった。
「大丈夫。ねぎまこは俺が守るから」
「西原君……」
僕は嬉しくなった。そして僕の心は西原への感謝の気持ちで一杯になった。
「よっしゃ行くぞ〜!」
西原が野球部の練習の時のような声を揚げ,西崎に殴り掛かった。西原の右ストレートが西崎の腹部に直撃,西崎はうめいた。
「いけ〜!!西原く〜ん!」
女子達が応援する。