Vol.26 河川敷‐3
「福川っていうのは行田の北の方にある利根川の支流なんだけど,中学の時に死体が流れ着いたっていうんで有名になった川なんだよ。知らない?」
「知らない……」
「あ,そう……」
皆に言われて僕は傷付いた。
「さて,じゃあどうやってそこまで行くか?」
「先生,とぼけないで下さい。先生の車で行けばいいんじゃないですか」
「どうやって行くんだよ。こんなに人入らないぞ?」
「大丈夫ですよ。コンパクトにすればいいんです」
「コンパクト?」
「この中にいる9人のうち,3人は魂です。それを利用すれば車になんか簡単に入れますよ。まぁ論より証拠。早く乗りましょう」
1人首を傾げている織部をよそに,僕達は駐車場へと向かった。
織部の車は四輪駆動の大きいものだった。
「これなら全員乗り切れるな」
僕は言った。皆は車内に押し込まれるようにして入って行く。
「皆入ったかぁ?」
織部が訊ねた。
「は〜い……」
後部座席は寿司詰め状態。苦しい。助手席には案内役のウコンとその腕に抱かれた小さな籠が。籠の中にはコンパクトに丸め込まれた3つの魂があった。無論織部とウコンはきちんとシートベルトを締めている。
こうして,各生徒からのブーイングを受けながらも,車は目的地・福川を目指して走り出したのだった。
僕達のいる羽生南高校から福川へ行くには,学校の近くを通る国道122号線を何キロメートルか北上し,県道59号線(羽生妻沼線)へ。北河原の交差点を右折すれば福川はすぐそこだ。織部は福川の堤防上で車を駐め,僕達は車を下りた。川を越えると妻沼町だ。
「……でも何でこんな所に犯人がいるんだよ?」
僕は呟いた。
「皆さん御苦労様でした。では私はこれで……」
「ちょ,ちょっと待ってくれよ。せっかくここまで来たのに一緒に行かないの?」
「すみません。一緒に行きたいという気持ちも山々あるのですが,これは任務なもので……」
そう言ってウコンは走り去って行った。
「あ〜あ。行っちゃった……」
僕は放心状態だった。