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Vol.24 河川敷‐1

 僕はその事に気付かなかった事を情け無く思った。

「戻ろうよ。教室に」

 春川と畑部が口々に言った。僕達は再び教室へと向かった。

 1年H組の教室の様子は少しも変わってはいなかった。畑部,春川,長田の3人は,真っ先に沢辺の許へ駆け寄った。沢辺は机上に上半身を任せていた。意識は無さそうだ。

「紘美!紘美!!」

 畑部達が呼び掛ける。しかし沢辺は目を覚まさない。そこで何を思ったのか,春川が突然教室後方にある掃除用ロッカーからほうきを1本取り出し,沢辺の後頭部目がけてほうきを振りかぶった。そしてそのほうきを力一杯振り下ろしたその時,

「てあぁ〜!!」

 沢辺がくるっと振り向き,ほうきを両手で受け止めた。その瞬間,時間が止まったような錯覚を覚えた。

「……さ,沢辺さん?」

 僕は言った。その予期せぬ出来事に皆唖然としている。

「そうだよ?紘美でぇ〜す!」

「……あれがねぎポンの言ってた『沢辺さん』って人なん?」

 滝谷が来て僕に耳打ちをした。

「あ,ああ。確かに沢辺さんだよ……」

 柿沼以外の女子は素直に沢辺と溶け込んでいる。しかし僕はどうしても納得がいかなかった。

 ――おかしい……。何でなんだ?!――

 そう僕が思っていたまさにその時だった。

「沢辺,お前大丈夫なのか?誠に言わせれば,お前気絶してたみたいじゃないか?」

 僕の体は織部の言葉に鋭く反応した。チャンスと思った僕は,その答えを耳を澄ませるようにして待ち構えた。

「キゼツ?……あぁあれ?演技!」

「演技ぃ?!」

 その瞬間,僕は今目の前にいる人間が沢辺本人ではないと確信した。

「誠,沢辺は本当に死にかけてたのか?」

 織部が訊ねた。

「はい,間違いありません。確かにそうでした」

「先生,これって……」

 柿沼が恐る恐る訊ねる。そう思っていたのは僕だけではなかったようだ。

「有り得ない事だけど,偽物かもしれないな」

 それを聞いた皆が一斉に耳を傾けた。

「何言ってるの先生?そんなの無いに決まってるじゃん」

 沢辺が反論する。

「違う……。紘美じゃない……」

 春川と長田が言った。この言葉が決定打となったのか,沢辺はついにその化けの皮をはがし始めた。

「……バレちゃしょうがないね」

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