Vol.22 魂‐5
「……まぁとにかく2人共さ,元気出そうよ!」
「……そ,そうだよ結花!しっかりしなさい!」
僕と長田が2人をなだめる。ちなみに春川と畑部は南高放送部の一員。畑部はこの部の副部長でもある。
――春川さんの隣にいる,この人は一体?――
僕はそれまで柿沼との面識が全く無かった為,柿沼に何をどう言ってやれば善いのか判らない。しかしその疑問は畑部によって解決された。畑部は柿沼に僕達の事を紹介している。
「あれ?根岸君ってホームページ作ってるよね?」
「えッ?!そ,そうだけど……?」
柿沼の突然の発言に僕は驚いた。
「……でも,何で俺がホームページ作ってるって事知ってんの?」
僕は柿沼に訊ねた。
「H組に藤本君っているでしょ?その人に教えてもらったの」
「藤本君?でもH組には藤本って人3人いるし」
「藤本光喜君」
「ふ〜ん……」
僕の言った通り,H組には藤本という名字の人が3人いる。スポーツ系の拓也,生徒会所属の光喜,おっとりタイプの幸児の3人だ。僕は勝手ながら柿沼と光喜との間に何らかのつながりがあると推測し,話を戻した。
「……で,これからどうするの?」
「利根川……,行くの?」
春川が訊ねた。2人共幾らか平静を取り戻して来ている。
「いや,でも利根川って決まった訳じゃないし……」
「じゃあ他にどこがあるの?」
今度は畑部が切り込んで来た。
「ちょ,ちょっと待ってくれよ。俺はただ利根川が1番近いかな〜と思って言っただけで,何の確信も無いんだから」
何だか国会の衆議院予算委員会のようになってしまった。もはや手に負えないと思った僕は,近くの日陰で高野,滝谷の2人と例の脅迫状について意見を交わし合っている織部へ助けを求めた。
「先生,助けて下さい」
僕は芝生に膝を落とした。
「何だよどうした?」
織部は僕の方へ振り向いて言った。織部達は腰を下ろしていた。僕もそこへ向かった。するとそれに気付いた女子も後から付いて来た。皆の表情はどれもへばっている。