Vol.21 魂‐4
「あの……先生,この名前どっかで聞いた事があるような気がするんですけど,何でしたっけ?」
僕は思い切って織部に訊ねてみた。
「『バーミューダトライアングル』か……。誠,よく知ってたな?」
「『バーミューダトライアングル』……」
「バーミューダトライアングル」
とは,大西洋西部の英領群島・バーミューダ諸島―フロリダ―プエルトリコの3点を結ぶ三角海域の事だ。
「魔の三角海域」
とも呼ばれ,船舶や飛行機の原因不明の遭難事故が多発する事で恐れられている。原因説には諸説あるそうだ。
「……でも,『河川敷』ってどこでしょうね?利根川ですか?」
僕が訊ねた。
「……だろうな。この辺は」
織部は少し考えて言った。
「あッ!!」
長田が突然大きな声を出した。
「どうしたの?!ながたん?」
畑部が言った。
「これ」
長田が弓道場の反対側の隅で何かを指差している。その先には2つの魂が仲良く隣り合う何とも不思議な光景があった。
「……あれ?俺あの装置どこやったっけ?」
「えっ!?ポン,あれ持ってないと元に戻せないよ?」
「あっ!もしかして……」
僕は元来た道を走って行った。無我夢中だった。幸い装置は僕が寝ていたバックネット裏の木陰に置いてあった。僕はさっと装置を拾い上げ,皆のいる弓道場へと向かった。意識が少し朦朧として来た。
「おい誠,お前大丈夫か?少しふらふらしてるぞ?」
「あ,これ位大した事ありませんよ。多分今日のこの暑さのせいだと思いますから」
僕は織部の心配をやんわりと振り切った。今回も魂担当は僕となった。
「誰が出るかな〜?」
僕はまず,左の方の魂に手を触れた。すると,G組の柿沼恵里香が現れた。同様に右の方にも触れると,今度はH組の春川結花が現れた。
「春川!柿沼!」
「織部先生!!」
2人は泣き崩れた。精神的に相当なダメージが与えられたんだろうなと僕は思った。2人が泣き止んだ後,僕はこれまでの経緯を2人に話した。
「そうだったの……」
2人の様子はまさに
「青菜に塩」
だった。