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Vol.19 魂‐2

「何か見つかった〜?」

 僕が大声で訊ねた。

「何も見つかんない」

 滝谷が答えた。高野も同様だった。どうやら野球場周辺には魂は落ちていないようだ。

「どうする?次行く?」

 滝谷が言った。

「いや,もう少し当たってみるよ」

 僕は確かに見たのだ。バックネット裏の茂みで何かが光ったのを。僕はその茂みの中をさらに深くを目指して()って行く。しかし期待とは裏腹に,それを見つけ出す事はできなかった。

「おっかしいな〜?」

 僕はそう言いながら顔中に吹き出た汗をハンカチで(ぬぐ)った。僕達はネット裏の木陰で休息をした後,西隣にあるサッカーゴール周辺を探ってみる事にした。

 3人で木陰に座っていると,女子2人が走って来た。

「ポン,どうだった?」

 畑部が訊ねた。

「いや,まだだよ。そっちは?」

「こっちも駄目。見つからなかった」

 畑部は首を横に振った。

「……無いのかなぁ?」

 僕がつぶやく。ほんの一瞬空気が冷たくなった。

「……あれって何かに反応したりしないのかなぁ?」

 滝谷が遠慮がちに言った。

「反応?」

 畑部が返す。

「……例えば何か電磁波みたいなものを出しているとか」

「なるほど〜。それは気が付かなかったよ。滝谷君って凄いね」

「そりゃそうだよ。だって滝谷君はもともとできるんだもん」

 僕は言った。

「そんな事無いって」

 滝谷が表情を変えずに僕の発言を振り払った。その様子を見て高野が

「本当は嬉しいくせに」

と言っている。僕は左腕にはめられた腕時計に目を落とした。時刻はいつの間にか10時を回っていた。

 ――あれっ?さっきチャイム鳴ったかな?――

 50分授業の場合,南高では9時50分と10時に1時限目終了と2時限目開始のチャイムが鳴る事となっている。しかし僕の耳にその音は届かなかった。

 ――いつもなら数学が始まってるって時間なのに――

 僕は思った。魂捜しに夢中になっていたせいだろうか?それともチャイムを流す装置自体が何者かによって止められてしまったのだろうか?僕はその事を考えつつ近くの木の幹にもたれ掛かった。

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