Vol.18 魂‐1
僕,高野,滝谷の男子3人と長田,畑部の女子2人は他の魂を求めて校庭へと向かった。しかし畑部は夏服に上履き姿なので,わざわざ靴を取りに行かなければならない。柔道場と剣道場では裸足になれば済んだ事だったが,外ではそうはいかない。畑部は上履きを靴に履き替える為,1人昇降口へと向かった。
畑部が他の4人と合流した時,4人は昇降口付近の森
「美波の園」
と自転車置場を必死になって捜し回っていた。
「ポン,校庭を捜すんじゃなかったの?」
畑部が呼び掛けた。
「何かね〜,長田さんが携帯の占いで『今日のラッキーディレクションは北だ』って出たんだって」
「そうなの?長田さん」
畑部は長田へ近寄って来て言った。
「うん。これ結構当たるの」
「ふ〜ん……」
畑部は携帯電話を持っていない。畑部は黙って作業へ取り掛かった。
「ねぇ長田さん,全然見つかんないんだけど……」
僕は言った。高野と滝谷は一緒に携帯で遊んでいる。
「……みたいね。じゃあやっぱり校庭に行く?」
「うん,そうだね。ただ校庭って広いなぁ〜。何か漠然とし過ぎてるよ」
井の中の蛙かもしれないが,南高の校庭は結構広い。野球場を始め,サッカーコート,ハンドボールコート,テニスコート,……。多くのコートがこの学校の校庭には敷き詰められている。ちなみにこの校庭は南高校舎の南に位置している。僕達はまず東側のハンドボールコート・野球場周辺を
「野球班(男子)」
と
「ハンド班(女子)」
との2グループに分けて捜してみる事にした。
「どう?何かある?」
東ゴール(校門寄り)にいる長田が訊ねた。
「何も無いよ〜」
西ゴールにいる畑部が答えた。実際にそれらしきものは全く見当たらない。
「次行こうよ〜」
畑部はそう言ってハンドボールコートを抜け出して野球場へ向かってしまった。先程までいたその場所に魂が落ちているとも知らずに……。
その頃,
「野球班」
ではバックネット裏付近を入念に捜し回っていた。当初
「『魂』なんて存在しない!!」
と思っていた3人だったが,もはや信じざるを得なくなってしまった。