Vol.17 追跡‐6
――何でだろう……?――
僕がそう思っていた時突然滝谷が言った。
「何かバリアとかが張ってあったりして」
「バリア?」
「バリアで音が遮断されてるんだよ」
「そうか!なるほど……」
僕は長田の手から装置を取り返し,ボタンをくまなく見つめて行った。
「ん?これかな?」
僕は装置の左手前隅に“BARRIER ON/OFF”と書かれたボタンがある事に気付いた。僕は思い切ってそのボタンを押してみる。すると,突然畑部の回りに黄色いドーム状の壁が現れ,その直後それが少しずつ消えて行った。
「あっ!聞こえる!」
畑部の回りを取り囲んでいた見えないバリアが完全に消失した。その途端,畑部のマシンガントークが蜘蛛の子を散らすかの如く一気に炸裂した。その声があまりにもうるさく聞くに堪えないので,話の内容を要約しておく事にする。
畑部は
「変な奴」
から魂を抜かれた後,僕が持っている例の装置でコンパクトに。その後他の魂と一緒にまとめてゴミ袋へ。それはもうまるで鼻紙扱いだったそうだ。しかし
「奴」
も甘かった。ゴミ袋の底が破けて魂が大流出。その中のほとんどは
「変な奴」
に拾われてしまったが,畑部は何とか生き延びた。もしかすると他にも同じ境遇を味わい路頭をさまよっている
「もの」
がいるかもしれない……。
「う〜ん……」
僕は考えた。皆の体から魂を抜いた張本人
「変な奴」
を探すか,それとも他の魂を拾って仲間をどんどん増やすか。僕は滝谷に訊ねてみる。
「ねえ滝谷君,これからどうしたらいいと思う?このまま戦うか,それとも人数をもっと増やしてからにするか」
「やっぱもっと人数を増やしてからの方がいいんじゃない?」
「やっぱり?俺も今そう思ってたとこなんだよ」
他の3人も同じ意見だった。僕達は他の魂を求めて柔道場と2階の剣道場中を捜し回った。しかし新たなる魂を見つける事はできなかった。
「次どこ行く?」
僕が訊ねる。
「あと残ってるのは校庭だけだよ?」
長田が言った。
「……だよねぇ。……じゃぁ行きますか。校庭へ」
「そうしよう」
滝谷が賛成したので高野もその意見に賛成した。高野は未だに動揺している。
「校庭かぁ……」
僕はこの異変の規模が段々と広がって行く事に恐怖感を抱いた。