Vol.16 追跡‐5
「どうするよ?これ」
僕は言った。
「どうしよう……」
さすがの長田もこれには戸惑っている様子だ。
「長田さん,ちょっと触ってみてよ」
「嫌っ!高野君触って」
「えっ?そういう事なら滝谷君が」
「な,何言ってんだよ高野君。それを言うならねぎポンだろ?」
「はあ?結局俺かよ?」
僕は失望した。
「全く……」
僕はぶつぶつと独り言を言いながら恐る恐るその物体に手を近付けて行く。手がぴたっと触れた。
「うわあっ!!」
その瞬間,その物体は一瞬にして閃光を一面に放ち,僕達の目を眩ませた。
「うッ!!」
そして見る見るうちに形を変化させて行く。
「……は,畑部さん?!」
そこに現れたのは,僕と同じH組の畑部君子だった。しかし畑部の姿は全身半透明である。
「長田さん,魂って半透明なんだね?」
僕が感心して訊ねる。
「……っていうか魂って本当は見えないはずなのに……」
「そんな細かい事はもうどうだっていいよ。畑部さん,これ一体どうなっちゃってんの?」
「………」
畑部は何かを一生懸命に訴えているようだが,言葉になっていないので何を言っているのかさっぱり解らない。
「畑部さん?」
畑部は何かを指差している。
「んん?何だこれ?」
僕は畑部の指差した先にあった長方形の小さな物体を手に取った。それはリモコンのような遠隔操縦装置だった。ボタンが沢山あり,使い方がよく判らない。僕が困っていると,
「ねぎポン,呼んでるよ」
と長田に声を掛けられた。畑部が何かジェスチャーをしている。
「……ん?今一解んないんだけど」
畑部は怒ってそっぽを向いてしまった。
「ヤベっ,ちょっと怒らしちゃったよ……」
僕はため息を吐き,装置を眺めた。装置の真ん中で大きな赤いボタンがドンと居座っている。
「……何だろう?これ……」
僕は試しにそのボタンを押してみようと思ったが,何か恐ろしい事が起こりそうな嫌な予感がしたのでやめにした。僕はその事を皆に伝え,装置の管理を長田に託した。
「……さて,これからどうするか……」
僕はまず
「なぜ畑部が喋られないのか?」
について考えた。しかし考えた所でどうなるといった訳でも無い。