Vol.14 追跡‐3
「えっ?何言ってんだよ長田さん」
「いいから早く逃げて!!」
長田の鬼気迫る勢いに僕はたじろいだ。
「ちょっと待ってくれよ。例え今俺達3人がどっかへ逃げたとして,……長田さんはどうなるんだよ?」
僕は肝心な所で長田の名前が出て来なかった事を後悔した。
「………」
「第一もうその格好してる時点で駄目じゃん。普通に誰かが助けに来たって事がバレちゃうよ?」
「……判った。行けばいいんでしょ?」
「そうだよ。そうでなくっちゃぁ」
長田は僕の説得にあっさりと応じた。
「変な奴」
を知らない僕達にとってこれは大きな前進につながる。僕は長田に訊ねた。
「……で,そいつって何者なの?」
「前にも言ったけど,見た目は本当に普通の人間。だけどやってる事が人間じゃない。あれは何て言ったらいいんだろ……」
長田は言葉に詰まった。
「……でもとにかく凄かったんでしょ?あんなもん取り出して」
「それはね。あれは恐ろしかった……」
長田は体を震わせた。
「っていうかそれって何なの?それを取って何の意味がある訳?」
「魂……なんじゃないの?」
「う〜ん……」
「でもさ,魂なんて有り得るの?俺はそういうの信じないけど……」
高野が言った。
「うん。そうなんだよ。俺もどうもそれが信じられなくってさぁ」
「俺もそう思う」
僕の言葉に滝谷が続いた。僕と高野,そして滝谷は
「『霊』や『魂』は存在しない」
と思っている。
「長田さんはどうなの?やっぱり霊とか信じるの?」
僕が訊ねた。
「私は信じるよ。こういうの面白いじゃん」
「ふ〜ん……。まぁいいや。とりあえずこれからどうするか考えよう」
しばらくの間,事務室内を沈黙が流れた。
「……長田さん,どこか行く当ては無いの?」
僕は言った。
「……分かんない。あいつ,どこに行ったんだろ?」
「それにここの人とか先生とかも,皆どっかへ行っちゃったみたいだしね」
「うん,そうだね……」
「でもこんだけ中回ってても見つけられないんだからさ,思い切って外に出てみようよ。何か見つかるかもしんないよ?」
滝谷が突然言い出した。