Vol.13 追跡‐2
「あっ,そうだった。話に夢中になっててすっかり忘れてたよ」
この一言によって,今まで張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れた。長田はその様子を察知したのか精一杯の声で助けを求め出した。しかし口にガムテープが貼られているので聞いている側は何を言っているのか全く判らない。
「長田さん,今助けるよ」
僕は手首と胴体に巻かれたビニールテープを解き,アイマスクを取ってあげた。しかし口に貼られたガムテープをはがす事には抵抗を抱いた。
「ゴメン。そのガムテープは自分ではがしてくんないか?」
手の自由が利くようになった長田は
「痛ッ!」
と言いながらもその自由の利いた手で口に貼られていたガムテープをびりびりとはがしていった。
「あ〜苦しかった。ねぎポンありがとう」
「そんな事無いよ。偶然見つけただけだし」
僕は長田に感謝されて少し照れ臭かった。
「あっ,そういえばA組の教室,あれは多分長田さんの席だと思うんだけど,そこに何かメモ帳が置いてあったんだよ。あれ,長田さんが書いたの?」
僕は思い出したように言った。
「えっ?あの紙見たの?」
「うん。それがどうかした?」
「うん……。あれは何だったんだろう?何か凄い……見た目は普通の人間なんだけど……もう思い出すだけで……」
長田は顔を伏せた。今にも泣き出しそうだ。
「……って事はあの紙に書いてあった事は実話な訳?」
「……そう。何もかも,全て……」
「そうか……。でも何で長田さんはこんな所にいた訳?しかもあんな状態で」
「……私は人質だったの,あいつの……。だから私だけ一人生き残ったの……」
「えっ?!じゃぁあの手紙は……」
「他に生き残った人をおびき寄せる為の罠……」
「くっ,そうだったのか〜。道理でそんな事ができる余裕があると思ったよ」
「そういえば,何でねぎポン達は生き残ってるの?あいつに遭わなかったの?」
「えっ……」
僕はこれまでの経緯を長田に話した。
「そう……。皆……」
「うん……」
僕は同調するしかなかった。高野と滝谷は黙ってその一部始終を聞いている。
「3人共早く逃げて……」
長田が声を震わせて言った。