Vol.12 追跡‐1
僕と高野と滝谷は,A組の生徒の中で唯一席を欠いている長田を求めてA組の教室を後にした。
9時18分。僕達は階段を降りた。いつもは授業の時間帯なので廊下は物凄く静かだった。緊張の糸がピンと張り詰めている。僕達は2年生のいる3階をできるだけ足音を立てずに歩く。2年C組の教室が真っすぐ目の前に見える。
しかし結果は同じだった。
その後3年生のいる1階にも行ったが,やはり結果は同じだった。“生存者”は誰もいない。僕達は階段を上った。
2階。ここには職員室を始めとする沢山の部屋が並んでいる。僕達はまず職員室を訪ねた。
「失礼しまー……,あれっ?誰もいない」
僕は驚いた。職員室に誰一人として人がいなかったのだ。僕達が各教室を回っていた時,室内には硬直した生徒しかいなかった。僕達は事務室に向かう。しかしそこにも人はいなかった。
――なんでだ?先生ならまだしも事務の人達までいなくなるなんて――
事務室はガラス張りになっているので室外からもよく見える。しかし念の為僕達は事務室の中に入って行った。僕,高野,滝谷はそれぞれ別の場所を探索する。
――やっぱり誰もいないのかなぁ?――
そう思った瞬間,僕達の近くでゴソゴソという物音がした。その音を聞いた僕はビクッとして胸が痛くなった。
「誰かいるんですか?」
僕は声を抑えて言った。物音はますます大きくなる。僕はその音のする方向に向かってじりっじりっと歩み寄った。そして僕はとんでもないものを目の当たりにする。
「……えぇっ?!」
そこには目にアイマスク,口にガムテープ,手首と胴体をビニールテープでぐるっとまとめられた長田の姿が。
「長田さん……!!」
その声を聞いた高野と滝谷が駆け付けて来た。
「誰だよ。こんな事した奴は?」
「……あれ?この人……」
「放送部の長田さんだよ」
「あぁ,道理で……」
僕と高野,それに沢辺と長田は共に羽生南高の放送部に所属している。
「っていうかそんな事より早くこの人を助けないと……」
僕と高野のやりとりに滝谷が突っ込んだ。