Vol.11 「変な奴」‐6
「でも何か引っ掛かるんだよね。だってこの手紙に書いてある事が事実なら,沢辺さんの事はどうやって説明できるんだよ?」
「あぁ,そう言われれば……」
2人はその事に気付いていなかったようだ。
「でもさ,この『光るもの』って何だろう?」
滝谷が訊ねた。
「うん……。あまり考えたくはないんだけど,もしかしたら魂なんじゃないかなぁ?」
「魂……?!」
2人はうつむいてうなっている。
「そう。実際に魂なんてものがあるかどうかは知らないけど……」
「そんなものある訳無いじゃん。小説じゃあるまいし」
高野が冷めた調子で言う。
「まぁね。第一そうだとしたら沢辺さんは何だっていう話だもんね」
「っていうかそんな事している暇があったらさっさと逃げろって感じだし」
「あぁ〜,言えてるね」
その時僕の頭の中で何かが走ったような衝撃を覚えた。
「……こんな事考えられないかな?」
「何?」
滝谷が食い付いた。
「実はここの生徒は何らかの理由で休んだ。で,それに目を付けた犯人『変な奴』がもっともらしい内容をメモに書いて俺達のような生き残りをどこかにおびき寄せようとしてるんだ。字なんてものは簡単に真似できる。まぁあくまでも仮説だけどね」
2人共その思いもよらぬ発言に呆然としている。僕は続けた。
「本当はそうでない事を祈りたいんだけど」
「ねぎポン,これは罠だよ。俺達の行動が見られてる」
滝谷が小声で言った。
「う〜ん……」
僕は考えた。僕としては何としてでもこの手紙の主を捜し当ててその人を僕達の仲間に加えたいという所だが,滝谷の言っている事もよく分かる。
「じゃあいっその事行ってみれば?」
「……そうだね。じゃあ行こうか?」
高野のぶっきらぼうな態度に僕は一押しされた。3人はその他のA組の生徒に次々と衝撃を与えて行った。そして彼らの反応が感じられない事に溜め息を吐いた。その生徒の中に今津と野崎がいたが,長田の姿は無かった。僕と同じく小・中と同じ学校を共にした今津を発見した滝谷の反応は,冷静だった。
――あの席は長田さんのだな?――
僕は直感した。そして僕達の仲間が1人増える事を確信,先を急いだ。