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とある冒険者の日常

冒険者の日常:聖職者、だいたい黒

作者: 志井 七乃華
掲載日:2026/03/20

ヒューマンの青年、グリディは深々と頭を下げた。

「……分かりました。その依頼、この私グリディが承りましょう」


目の前の少女はほっとしたように微笑む。だがその横で、ドラゴンボーンの女性リフィーはわずかに眉をひそめ、そっと耳打ちした。

「ねぇグリディ。その子からお金取る気じゃないでしょうね?」

「何を仰るのです。寄付は余裕のある方からのみですよ」


穏やかな笑顔のまま、グリディは少女の手を取り、膝をついて指先に口づけた。少女は頬を赤く染め、慌てたように去っていく。


その背を見送りながら、グリディの表情が変わる。

「見ましたか、リフィー」

どこか企みを帯びた笑みに、リフィーは嫌な予感を覚えた。

「あの指輪、本物の金です。宝石が毎晩一つずつ消えるなら……最近急に羽振りの良くなった者がいるはず」


「……まともなこと言うじゃない」

「指輪の匂いも覚えました。あとは辿るだけです」


酒場を出た瞬間、グリディはふっと笑みを浮かべた。視線の先には、朽ちた廃屋。

「ここから、金の匂いがしますねぇ」


制止も聞かず踏み込むと、中では男たちが盗品を分け合っていた。

「なんだテメェら!」

怒号と共に襲いかかる男たち。しかしリフィーは即座に大盾を構え、すべての攻撃を受け流す。弾かれた男たちは床に叩きつけられた。


「防がなくても私の魔法で一撃でしたのに」

「怪我したら回復代請求するでしょ」

「ええ、その通りですよ」


リフィーは大きくため息をついたのと同時に、グリディが光の魔法を放った。眩い光が男たちを貫き、邪悪な気配は一瞬で消え去る。


「これで一件落着です」


グリディはさらりと金品を拾い集める。

「ねぇ、それ持ってかないよね?」


「何をおっしゃるんですか。

私は聖職者(クレリック)ですよ?」




やがて少女が駆け寄ってきた。

「ありがとうございます!形見が戻りました!」

大事そうに金のブローチを握る姿に、二人は微笑む。


「報酬ですが、このブローチ以外をどうぞ!」

「おや……これはありがたい寄付ですが、すべては受け取れません」


意外な言葉にリフィーが目を丸くする中、グリディは優しく少女の手を包んだ。

「どうか日々の祈りを。神は貴女を見守っています」


少女はうっとりと頷き、去っていく。


その背を見送り、リフィーは低く問う。

「……何が目的?」

グリディはくっくっくと笑った。

「あの盗品、ブローチ以外はすべてメッキですよ」

「え?」

「価値はほぼゼロ。ならば——祈りに来てもらい、寄付を現金で頂く方が効率的でしょう?」


リフィーは顔をしかめる。

「……最低」


こうして二人は今日もまた、寄付という名の稼ぎを求めて歩き出すのだった。

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