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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
捕食継承

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第039話「落とし物」


 拠点にいながら、泥底の主のデータを取ることにした。


 裂け目に体を収めたまま、振動感知を泥底方向へ広げる。回廊は拠点の南東にある。主の巡回が通過すれば、あの特徴的な重い周期振動が裂け目まで届くはずだ。壁の向こうのシフト表を埋める作業。退屈だが、死なない。


 一回目の通過を拾った。重く、遅く、一定のリズムで泥底を押す振動。昨日と同じ方角、同じ重さ。通過時刻を頭に刻んだ。


 二回目の通過は、一回目から想定より短い間隔で来た。昨日の「予定より早い」通過よりは長いが、初日の間隔よりは短い。


 ……ばらつきがあるな。


 三日分のデータを並べた。最短間隔は初日の七割弱。余裕を二割見るなら、安全時間はそこからさらに短くなる。あいつは時刻表通りに動く相手ではない。あと二日分取れば最短パターンが絞れるが、今日も回廊に深入りする気にはならなかった。


   ◇ ◇ ◇


 データ取りを終えてから、北西の狩り場へ出た。


 回廊ではなく、根道経由の東の狩り場だ。主の巡回間隔が確定するまで、回廊の深部は避ける。効率は落ちるが、不確実な安全時間で命を張るよりはましだ。


 根道を辿り、岩棚を伝い、壁走りで岩壁を渡る。この動線は四日目になる。壁面への吸着がほとんど無意識で入るようになっていた。以前は一歩ごとに力を入れていたのが、体重移動だけで維持できる。


 岩棚と壁面の境目を移動している時、枝脚蟲を見つけた。壁面に張りついた多脚の蟲だ。枝分かれした脚で壁と天井を同時に掴んでいる。嗅覚強化がなければ岩の凹凸と区別がつかない。


 壁走りで接近し、頭部に噛みついた。枝脚蟲が壁面を蹴って逃げる。壁面上の追走になった。天井方向へ追い上げ、枝脚蟲が角で止まった隙に毒牙を差し込んだ。


 そこで通知が来た。


『壁走り Lv3 に上昇しました』



 壁走りLv3の効果はすぐに分かった。吸着力が上がっただけではない。壁面での方向転換が滑らかになっている。今まで一度止まってから向き直していた動作が、流れるまま曲がれる。壁面が地面と同じ感覚になった。


 枝脚蟲を食った。量は少ないが経験値は入る。通知は来なかった。次のレベルにはまだ遠い。


   ◇ ◇ ◇


 北西の狩り場から帰路を取る途中で、回廊の上を通過した。


 振動感知で確認する。主の気配は遠い。二回目の通過はもう過ぎている。安全時間の中だ。ただし深入りはしない。泥底を岩棚の上から眺めるだけ。


 昨日、主が何かを咥えて通過した区間を見下ろした。泥底の溝は昨日と今日の分で二本増えている。


 溝の端に、何かが落ちていた。


 泥から半分出ている白いもの。小さい。掌に載る程度のサイズだ。壁走りLv3で岩棚から泥底近くまで降り、尾で引っかけて持ち上げた。


 骨だった。


 蟲の外骨格ではない。内側に空洞があり、表面が滑らかで、端が折れている。内骨格だ。この層の蟲は全て外骨格。内骨格を持つ生き物は、ここにいるはずがない。


 骨の表面を舌先で確かめた。折れた端の近くに、浅い溝がある。自然に折れた断面ではない。均一な深さで、真っ直ぐ走っている。


 ——切り痕だ。


 刃物で切られた痕。蟲の顎が噛んだ跡とも違う。鋭く均一な直線。あの三体が使っていた金属の刃と同じ類のものが、この骨を切っている。


 主が昨日咥えて運んでいたのは、これか。あるいはこれが付いていた何かか。


 頭の中で、いくつかの可能性が回った。一つ。人間が仕留めた獲物の骨が泥底に残り、主がそれごと回収して運んでいた。二つ。主が、内骨格を持ち刃物を使う何かを——


 その先は止めた。確かめる手段がない。骨の種類を判別する知識もスキルもない。確定できないことに時間を使うより、確定できることを積む方がいい。


 骨を泥底に戻した。位置は覚えた。


   ◇ ◇ ◇


 拠点の裂け目に戻った。HPは七割。枝脚蟲との戦闘と移動中の毒霧被毒で少し削れているが、安全圏だ。


 頭の中の地図を更新した。


 主の巡回データは三日分。あと二日で最短パターンが絞れる。壁走りLv3で壁面移動の効率が上がった。安全時間が短くても、以前より広く動ける。


 あの骨のことを考えた。


 内骨格。刃物の切り痕。主が運んでいたもの。あの回廊の奥に、もっとある。主が獲物を運んでいた先に、何かが溜まっている場所があるはずだ。餌場か、巣か。


 確かめたい。だが、まだ早い。安全時間のデータが足りない。


 あと二日。


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