表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

第025話「赤節」


 今日は主の巣の前までの道を開ける。


 そのために、深部手前で道を塞いでいる中型を片づける。


 昨日の時点で、巣そのものは近いと分かった。だが、近いから触っていいわけではない。順番を一つ飛ばすだけで死ぬ相手がいる洞窟で、その手の近道はだいたい近道では終わらない。


 だから今日は、その一匹を仕留める。


   ◇ ◇ ◇


 北西通路の奥へ入ると、空気が少し熱かった。


 壁の割れ目から、乾いた熱と獣臭い匂いが混ざって上がってくる。その少し手前を、別の振動が往復していた。中型だ。しかも速い。


 振動の刻み方が大型百足より細かい。往復の幅も短い。巣の前を警備していると考えると、だいぶ嫌な配置だった。


 姿を見た瞬間、名前はすぐ出た。赤節百足だ。


 体長は一メートルほど。大型百足より一回り小さいが、節と節の継ぎ目だけが赤く、前寄りの脚が鎌みたいに湾曲している。あれで切る気だ。


 見た目からして、だいぶ性格が悪い。


 いや、こういう場所で生きているなら正しい形なのかもしれないが、こちらからすると十分うっとうしかった。


   ◇ ◇ ◇


 最初の一撃で、それはすぐ分かった。


 横から噛みに行こうとした瞬間、赤節百足はほとんどその場で体を折り返した。赤い節が縮み、湾曲した前脚が横殴りに払われる。


 速い。しかも曲がる。


 側面へ回れば安全、という読みがそのまま潰れた。鎌の先が鱗を浅く削り、石壁に火花みたいな音が走る。


 嫌な武器だった。大型百足みたいな重さはない。だが、その分だけ切り返しが軽い。


 二度目は低く入ってきた。跳ねるように前脚を振り上げ、頭を狙う。体を引いて避けたが、その避け方では遅れるとすぐ分かった。


 必要なのは大回りじゃない。


 もっと短く、もっと鋭く向きを変える動きだ。


 そう考えた時点で、だいぶ腹は決まっていた。


   ◇ ◇ ◇


 赤節百足が三度目の折り返しに入る。


 今度は逃げる向きを変えた。壁際の出っ張りを支点にして、半身だけを先に振る。普段よりきつい角度で体を返し、鎌の外側へ滑り込む。


 間に合ったが、浅い。噛みつけたのは赤い節の表面だけで、すぐに鎌が戻ってきた。離れる。もう一度曲がる。今度はもっと鋭く返す。


 同じ動きを三度繰り返したところで、体の曲がり方が一段軽くなった。


『急旋回 Lv1 を習得しました』


 ちょうどよかった。ここで曲がれるなら、そのまま勝ち筋に変えられる。


 次の折り返しは、さっきまでより明らかに短く決まった。出っ張りを軸にして体を返し、そのまま赤節百足の内側へ潜り込む。鎌の根元がこちらを向き切る前に、赤い節の継ぎ目へ牙を押し込んだ。


 今度は深い。


 ——入った。


 毒も入る。


 赤節百足の体が大きく痙攣した。


 それでもすぐには止まらない。むしろ怒って、前脚の振りがさらに荒くなる。


 だが荒いなら読む余地がある。


 鎌が来る角度を二度見たところで、三度目は外せた。刃の起こりが少し見える。赤い節が沈む瞬間に前脚が来る。そこだけ分かれば十分だった。


 三度目の鎌を外したところで、返す体勢のまま腹側へ潜り込んだ。今度は節を割るつもりで外殻粉砕を乗せて押し込み、手応えが浅くないことを確かめる。そこから動きが明らかに鈍った。


 赤節百足はなおも向きを変えようとしたが、もう最初ほど鋭くは曲がれない。俺はその外側を取り続け、最後に首の少し後ろへ噛みついて締めた。


 長くはかからなかった。止まった時には、俺の方が少し息が荒かった。


 ——終わった。


 勝てた、という実感が遅れて来た。


 嬉しい。嬉しいが、そのすぐ向こうに主の巣があると思うと、喜び方も少し控えめになる。


   ◇ ◇ ◇


 食う前に、少しだけ待った。


 巣の側なら、横槍が来てもおかしくない。


 振動がないことを確かめてから噛みついた。


 赤節百足は大型百足より薄いが、節の継ぎ目に妙な弾力があった。食いにくくはない。むしろ、中型にしては当たりの部類だった。


 問題はここで何も出ない時だ。


 中ボス格で空振ると、さすがに少し渋い。


 そう思った直後、通知が来た。


『鎌刃見切り Lv1 を習得しました』


 よかった。本当によかった。


 欲しかったのは火力だけではない。あの鎌を読む感覚が残るなら、次に同じ手が来ても少しはましになる。


 続けて、もう一つ通知が出た。


『Lv4になりました』


 全快したのはありがたい。ありがたいが、毎回これで気が大きくなるなら、そのうち痛い目を見る気しかしない。


   ◇ ◇ ◇


 食い終えてから、巣の前まで進んだ。


 壁の割れ目は、昨日よりはっきり熱を吐いていた。奥に熱だまりがある。匂いも濃い。百足の体液と、古い殻と、乾いた卵の殻みたいな匂いが混ざっていた。


 その前で、顎を床へつける。


 振動が少し違った。広い———というより、正確には深い。


 振動感知が、今までより一段はっきり床の奥を拾う。巣の中で細かい揺れがいくつも重なっているのに、その向こう側にもっと重い芯があるのが分かった。


 そこで通知が来た。

『振動感知 Lv3 になりました』


 今まで散々百足を追い回した成果が、ようやくまとまったらしい。


 今日の収穫は悪くない。Lv4、進化66%、急旋回、鎌刃見切り、振動感知Lv3と、並べる数字や名前にもちゃんと意味があった。


 数字だけ見ればかなりいい日だ。


 ただ、そのいい日の正面に主の巣がある。


 そこだけは、どうしても評価点を下げてくる。


 次にやることは決まっていた。


 巣の前の地形を崩して、噛める形を先に作る。


 主に触るのは、その後だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ